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ドラマ 検察庁法案(2)

作 岳田良比古

アベ総理大臣
検察庁法案はつぶれてしまった。残念だ。
しかし、継続審議にしたから、秋の国会では通そう。これが通らないと、私のメンツはまるつぶれだ。
モリ法務大臣。今回は集中砲火を浴びて、コロコロ答弁を変えて、コロコロナ大臣だったぞ。今度は頼むぞ。

モリ法務大臣
ひどい!ソーリだって野党の質問にまともに答えてないじゃないですか。

アベ
バカ。あれはレベルの高い答弁技術で、質問より時間をかけて関係ないことをまくしたてるんだ。そうすると質問時間を少なくできる。

モリ
私もまねしてみたんですが、根が正直なものでかえって墓穴を掘りました。

アベ
ああ、あの検察官が逃げたって話ネ。
それにしても、あの話は検察官の定年延長とどういう関係があるんかね?

モリ
それは私も咄嗟に口から出てしまったので、どうしてなんでしょうかネェ。

アベ
ところで、黒川くんの失態にはあきれ返った。東京高等検察庁検事長という検察ナンバー2の地位にありながら、マージャン賭博をやっていたとはなぁ。
しかも、私の出した緊急事態宣言中だぞ。
形式上は君の監督が及ぶんだよ。

モリ
ハァ。私もまさか検事長が賭けマージャンやってるなんて思いもしなかったです。
賭博罪は50万円以下の罰金ですが、黒川さんは常習賭博になる可能性があります。その場合は、懲役3年以下になります。

アベ
常習にはならないだろう。だって、彼は博徒じゃないもん。

モリ
それがそうでもないんです。最高裁の判例では、博徒や遊人でなくとも、常習賭博になると言ってます。

アベ
検事総長にしようと思っていた検事長が博徒と同じなのか。
ウウム。これは私の任命責任になってしまう。

モリ
賭けマージャンは依存症になるんです。
コロナの外出規制でもパチンコ店へは大勢人が行ってたでしょう。あれが依存症なんです。

アベ
病気になってしまうのか。それはよくない。

モリ
しかし、ソーリだって、依存症になるっていわれているカジノを推進しているじゃないですか。

アベ
君はいつから野党になったんだ。あれは儲かるし、アメリカのためにもなるんだ。
今度、そんなこと言ったらクビだからね。

モリ
スミマセン。つい正論を言ってしまいました。
(ッモウ。アベ一強だからって、いつもそうやって脅かすんだからぁ)

アベ
こんなことになった以上、早く辞任させて国民の騒ぎを押さえるんだ!

モリ
そんなこと言ったって、法務省できちんとした調査の上で処分を決めなくては、また、国民の抗議が大きくなります。

アベ
辞めるんだから処分なんて軽くていいんだ。
早くやってしまえば火は消せる。スピード感が大事だ。
初期消火が鉄則だ。

モリ
だから、黒川さんの定年延長について、私が集中砲火でシドロモドロになったときに、火を消せば、こんな大事にならなかったし、私も生き恥をさらさなくてよかったんです。

アベ
結果は、定年延長しなかったことと同じになるんだからいいじゃないか。
ゴチャゴチャ言わないで、言うとおりにしなさい。
それにしても、こうなったのは今の稲田伸夫検事総長が勇退しなかったからだ。勇退していれば黒川くんを検事総長にすることができたんだ。
それをガンとして退任しなかったもんだから、こんなことになってしまった。もともと彼のセイだ。

モリ
そんなこと言ったって。稲田検事総長の任期は慣例の2年で退任するときまでだって、7月まであるんですよ。

アベ
君はだんだん正論を言うようになってしまった。アベ政権の閣僚としての資質がない。質問をはぐらかして自論を長々と言ったり、公文書を書き換えたり、嘘を言ったりして追求をかわし、着々と思い通りの政策を進める。これが私の得意手なんだ。「嘘も答弁」というではないか。

モリ
ソーリ。それは「嘘も方便」ですよ。また、国語まちがえた。

アベ
わたしゃ、国語がダメだが、英語は強いよ。
なんせ、米国に従属していると、しょっちゅう言われているからね。とにかく、黒川くんを辞めさせて、それと一緒に稲田検事総長も辞めさせろ。

モリ
(どう言って、辞めさせたらいいのかな。もう私が辞めたい。困ったときに人を助けられる弁護士になったのにな)