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裁判・司法とシネマ(7)「アラバマ物語」

 「アラバマ物語」(原題: To Kill a Mockingbird)は、1962年に公開された映画です。

 主演はグレゴリー・ペック。あの「ローマの休日」でオードリー・ヘプバーンの恋の相手役を演じた名優です。グレゴリー・ペックの演じた「アラバマ物語」の主人公の弁護士アティカスは、アメリカ映画協会が選んだ「アメリカ映画100年のヒーローと悪役ベスト100」でヒーロー部門第1位を獲得しています。

 「アラバマ物語」の舞台は、1930年代のアメリカ南部の田舎の町。そこで起きた白人女性への暴行事件の犯人として逮捕された黒人男性トムの弁護を判事からのたっての頼みで受任します。
 当時、いまだ黒人差別は根強く、特に南部での差別は激しいものでした。極悪人として逮捕されたトムは、裁判で無実を主張しますが、町中の白人住民は、トムが犯行を犯したものと決めつけ、憎悪を募らせ、拘置所に収監されているトムを襲撃し、殺害しようとします。アティカスは襲撃を予期し、一晩中拘置所の前で待機しトムを守り、激高する住民を諭します。アティカスは「白人でありながら、黒人を弁護する悪人」として、白人住民に憎悪され侮辱にさらされます。顔面にツバを吐かれ、罵られてもアティカスは黙々と仕事をこなしました。
 そんなアティカスは、妻を早くに失くし子ども2人を育てる父親でもありました。「どうして黒人の弁護をするの?」と尋ねる娘に、アティカスは「公平でなくてはならない。そうでないと僕はお前たちに意見することもできないよ」と娘を優しく諭します。

 陪審員は全員が白人という逆境の中、アティカスは次々と検察官の立証を崩し、事件の真相を明らかにします。そして、くだされた評決は・・・・。
 この先はぜひ映画を御覧いただきたいと思います。スーパーマンでもバットマンでもなく、アティカスがアメリカ映画NO1のヒーローに選ばれた理由がきっとわかるはずです。

文責 一由