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相続税と養子縁組

 相続税法の改正により、平成27年1月以降の相続については、基礎控除が4割減になりました。それまでの5000万円+1000万円×法定相続人数から3000万円+600万円×法定相続人数となりました。
 妻と子2人が法定相続人である場合は8000万円から4800万円になります。

 これにより、これまで相続税のかかる人は年間死亡者の4%から6%に増加するといわれています。相続税とは無関係だと思っていた人も、新たに対象者になる可能性があります。
 自分や自分の被相続人が亡くなった場合に相続税がどうなるのかは、遺言や遺産分割と同様に関心を持っておくことが必要です。
 この相続増税とは直接関係はありませんが、節税のために養子縁組をする方法がよく取られてきました。「節税養子」とか「相続税養子」と呼ばれる養子縁組の一態様として民法の教科書でも紹介されています。

 養子は法定相続人ですから、基礎控除が増えることによる減税になります。他方、相続人の数が増えることにより、他の相続人の相続分は減少します。例えば、長男の妻や子が父親と養子縁組をすれば、他の兄弟姉妹の相続分は減ります。兄弟姉妹がこの養子縁組を了解している場合は良いですが、相続が開始してから知った場合は争いになる可能性が高くなります。兄弟姉妹は、専ら相続税の節税のための養子縁組だから民法802条1号の「当事者間に縁組をする意思がない場合」に該り、養子縁組は無効だと主張することになります。
 これまで裁判では3件ほど争われましたが、いずれも高裁段階での判決で結着が付きました。
 昨年1月31日、この問題が最高裁まで上がって審理され、初めて最高裁の判断がなされました。最高裁は、この場合節税効果を発生させることを動機として養子縁組をすることであるから、節税する動機も縁組をする意思もあった(併存する)として縁組は有効であるとしました。これで節税養子については結論が出たことになりますが、事案によっては無効となる場合もあり得ます。例えば、相続税を免れる目的で養子縁組を仮装したような場合です。
節税養子は、このように他の相続人の了解がないまま行われると争いになることがあるうえ、相続税法上の優遇措置を受けられない場合もあるので、弁護士や税理士の専門家の意見を聞くのが安全です。
 なお、相続税法上は孫を養子にした場合は相続税が20%アップします。また、実子がいる場合は養子の数は1人、実子がいない場合は2人が限度です。

文責 武田