珍しいソフトボール大会 2011年10月

 連日の猛暑はどこへやら、急に秋の訪れを感じる季節となりました。
 「秋」と言えば読書の秋、食欲の秋、そして、私の好きなスポーツの秋。
先日、長野県弁護士会(松本在住会)と松本少年刑務所(※)の受刑者とのソフトボール大会の親善試合に参加させて戴く機会がありました。
 今回は、そんな全国でも珍しい(恐らく前代未聞?)体験記をご披露致します。

 我らが弁護士会は、上下バラバラのジャージやトレーナーといったあり合わせの服装でメンバーも他の在住会や修習生を加えるなどあり合わせでしたが、受刑者チームは所内のソフトボールクラブの選抜メンバー。ユニホームも格好良く揃え、号令の挨拶や整列の完成度からして、完全に弁護士会チームは負けておりました。
 松本少年刑務所内にはソフトボールができる立派なグラウンドがあります。そして、面白いのは刑務所独自のルール。フェンスを超えたらホームランではなく「アウト」。バックネットのフェンスを越えても「アウト」。盗塁も、ピッチャーの目を盗んだら、それも「アウト」。あくまでもボールがピッチャーの手を離れてからというルールでした。
 私の勝手な想像ですが、フェンス越えは刑務所では御法度、それに盗みはいけないとの教えが暗示されているのか…。そして、ホームラン級の当たりでも刑務所施設の屋根にあたった場合には二塁打(これは、器物損壊を極力避けるようにとの教えなのか・・・)。

 私の妄想はさておき、いざ試合が始まると受刑者チームのピッチャーの球が全日本女子ソフトのように速いこと速いこと・・・。
 いざ打席に立つと、体感速度ではバッティングセンターでの130㎞程度でした。
 しかし、そこは弁護士会の底力。初回にヒットとフォアボールを重ねて2点をもぎ取りました。私も、しっかりとフォアボールを選び(単に打てずに見逃していたらフォアボールだった?)、得点に貢献しました。
 時間の関係上、3回まででしたが、最終回までは2対1で弁護士会チームがリード。
 しかし、最後の最後で、受刑者チームの打線が爆発し、ホームラン級の二塁打を連打され、あえなく2対3のサヨナラで負けてしまいました。
 受刑者チームの少年らは、生き生きとソフトボールを楽しみ、ベンチからも大きな声を出し、統率の取れたチームワークがとても印象的でした。
 私は2打席回ってきて、1四球とファーストフライという不甲斐ない結果に終わってしまいました。是非、次回リベンジしたいです。

 しかし、少年らが生き生きとソフトボールを楽しみ、仲間等との連帯意識をもち、体と心を鍛えることによって更生や社会復帰に役立てている姿を見られて、とても清々(すがすが)しい気持ちになりました。20歳前後の彼らにとって一度は過ちを犯したものの、もう一度フェンス(塀)のないグラウンドでソフトボールがしたいと思えるだけでも、大きな更生の一助となっていると確信しました。
 彼らの目の輝きからそう学べたことが、私にとって大きな「実りの秋」でした。

(※)松本少年刑務所・・・全国で7箇所ある少年刑務所の一つ。20歳前後の男性受刑者を収容。全国の刑務所のうち、唯一中学校がある。

(文責:宮下)