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死後離縁について

 前回「死後離婚」(姻族関係終了の意思表示)について説明しました。
今回は死後離縁について説明します。

離縁 イメージ写真 「死後離婚」は戸籍法上の届出だけで足りますが、死後離縁は家庭裁判所の許可が必要となります(民法811条6項)。
 この違いは、「養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる」(民法727条)として、いわゆる法定血族の関係が生じるからで、婚姻によって配偶者とその一方の血族との関係が姻族関係であることとの差によるとされています。

つまり、法定血族の場合は相続権や祭祀の承継が生じ、扶養の義務があり、姻族関係より法的効果が大きいことが理由とされています。
 一般に妻が夫の死亡後に夫の親族との交際をやめたいという事例に比べると養子縁組した夫が養親の死亡後に離縁したいと考えるケースは稀だと思われます。しかし、養親の実子である兄弟姉妹(養方)との血族関係を養親の死亡を機に解消したいと考える場合もあるでしょう。
 その場合は、この制度を使うことができます。
 家庭裁判所は、申立てを受けて、多額の相続をしながら祭祀の承継や親族の扶養義務を免れるなど、自分勝手な離縁に該らないかなどをチェックして判断をすることになります。

死後離縁をすると、次のような効果が生じます。
1 既に発生した養親の相続に影響はありません。
2 養方の兄弟姉妹の相続は生じません。
3 養方との親族関係はなくなり、扶養義務が消滅します。
4 氏(苗字)
  復氏します。ただし、縁組から7年以上経っている場合は、市役所等に届出することによって、そのまま養子のときの氏を名乗ることができます(民法816条)。

(武田)