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裁判・司法とシネマ(5) 映画「ケイン号の叛乱」

太平洋戦争下のアメリカ海軍「ケイン号」における反乱事件を描いた映画です。名優ハンフリー・ボガートが、悪役的な艦長役を演じていることでも話題となった作品です。

名門プリンストン出の新米将校のキースが乗艦を命じられたのは「ケイン号」でした。ケイン号は、豪傑タイプのベテラン艦長が指揮する船でしたが、艦長は海軍本省からの命令で別任務を命じられ、クイーグ艦長(ハンフリー・ボガート)に交代します。クイーグ艦長は、就任早々、将校を集め、水兵の軍紀が緩んでいると叱りつけ、これまでのおおざっぱな艦長のやり方は改める、シャツをズボンから出してはならない、一事が万事だと叱咤します。。

ところが、クイーグ艦長は、シャツをズボンに入れるかどうかといった細かい規律にはこだわるくせに、肝心の戦闘判断になると疑問のある指揮が目立ち、マリク副長やキースらはクイーグの資質に疑問を持つようになります。敵前逃亡まがいの行動もとったことから、船内でも臆病者であることを揶揄する替え歌まで作られ、クイーグ艦長は狼狽し、部下に謝罪しますが、部下からの信頼を喪失していたことに気がついた艦長は、ますます些細なことにこだわるようになります。船内のイチゴがわずかに紛失したことに怒り、水兵の所持品検査をはじめるなど常軌を逸した行動までとるようになった艦長について偏執病との声も出始め、マリク副長は、海軍規定に基づき、艦長の指揮権を副長の自分が奪って指揮を執らねばならないかもしれないとまで思い悩みます。

そのような中、ケイン号が大嵐に巻き込まれ、やはり正常な指揮を執れずに狼狽するだけの艦長に対し、このままで船自体が沈没することになると判断したマリク副長は、海軍規定を発動し、艦長の指揮権を奪取し、乗員の生命を救いました。叛乱行為であると激怒した艦長は、マリクを軍法会議(軍隊内の裁判所)に告発し死刑に処すべきと憤ります。クイーグは本省の覚えがめでたい軍人であったことから、本省もクイーグの言い分を鵜呑みにして、マリクを軍紀違反で死刑に処すべく軍法会議を開催します。クイーグ艦長の精神状態は正常であった、との医師3名の鑑定書もそろえ自信満々の検察側に対し、マリクを弁護しようとする弁護人はおらず、渋々引き受けたのが敏腕の海軍法務官グリーンウォルドでした。マリク側は重要証人の同僚キーファにも裏切られ、医師の証言も崩すことができず、敗色濃厚な展開となりますが、グリーンウォルドは、クイーグ艦長その人の反対尋問にすべてをかけ、無罪を狙います。

グリーンウォルドは、ラストシーンで、マリクやキースを厳しく叱責します。また、キーファの企みも暴露し、かえって敵であるはずのクイーグ艦長を弁護します。その理由とは・・・。

この先は、ぜひ、映画をご覧ください。古い映画ですが、法廷での尋問のやりとりは、息詰まる展開で、弁護士としても参考になる部分が多々あります。