TOP > 今月のコラム一覧 > 58

労働審判のやれる裁判所が増えます… 2015年2月

働く職場は,家庭と並んで私たちの日々の生活の重要な一部です。そのため,採用から始まり,給与や労働時間,休暇等の労働条件,解雇・退職といった様々な場面で法律違反や紛争が起きる可能性がありますし,現に多くの労働問題がこれまでも現在も生じています。  


ところが,この解決方法については,たいへんな労力と時間がかかる裁判所の仮処分手続や本裁判手続とか,強制力のない労働局によるあっせん手続などがありましたが,いずれも使い勝手が悪く,問題となっていました。
 平成18年4月から,労働審判制度ができました。  これは,労働審判官(裁判官)1名と労働関係について専門的な知識と経験を有する労働審判員2名による労働審判委員会が,原則として3回以内の期日で審理し,お互いの主張を聞きながら,適宜調停を行い,解決に至らない場合は,審判で判断を示し,これが確定すれば判決と同じ効力を持つものです。
 実際,制度が運用されると,その使い勝手のよさから,初年度全国で877件だったものが,平成24年度には3719件まで増加しています。
 このような評価高い制度ではありますが,重大な欠陥があります。それは,各地方裁判所の本庁でしか行えず,各地域の裁判所支部への申立てはできないとされていることです(もっとも,平成22年4月からは,東京の立川支部と福岡の小倉支部でも取扱うようになりました)。
 長野県の場合,南北に長いため,中南信地域の労働者が労働審判を利用しようとしても裁判所へ来るまでの時間と交通費だけで諦めざるを得ない状況にありました。紛争の発生状況を見ても,東北信と中南信は数で同じです。
 このため,長野県弁護士会の地域司法計画推進委員会では,「松本支部でも労働審判の開設を!」と訴え,県議会や市町村議会への請願や最高裁判所への申し入れ等の精力的な活動と,パンフレットを作成して市民に訴える等してきました。そして,これは全国にも波及し,ついには最高裁と日弁連の協議により,松本支部を含む相当数の支部で労働審判が行われる可能性が現実的なものになりました。当初はとても無理だと思われた全国的課題も,長野の弁護士会の一委員会の声と活動が可能にしたといえます。