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「拘置所のタンポポ―薬物依存 再起への道」を読んで… 2014年5月

 この本は,薬物依存者の回復のための日本初の民間のリハビリセンターであるダルク(DARC Drug Addiction Rehabilitation Center)の創設者である近藤恒夫氏が書いたものです。 近藤氏自身も覚せい剤依存症だったことがあり,依存に至った経緯などが書かれています。依存症だった者しか書けない覚せい剤の「魅力」も,とてもわかりやすく書かれています。試してみたくなってしまうと困るのでここでは書きませんが。それと同時に,覚せい剤依存症の症状についても書かれています。覚せい剤に禁断症状はありませんが,幻覚をみたり,うつになったりするそうです。

 通常,覚せい剤使用罪などで逮捕勾留され,裁判を受けると,1回目は執行猶予付の判決になりますが,2回目は実刑になる場合が多いです。たとえば,1回目は,懲役1年6カ月執行猶予3年,2回目は懲役2年の場合,2回目が1回目の判決から3年以内なら3年6カ月間刑務所にいくことになります。
 それがわかっていても,再び覚せい剤を使用してしまう人がとても多いのです。
 近藤氏は,覚せい剤は「やめる」のではなく,「やめ続けなければならない」といいます。覚せい剤の「魅力」を一度知ってしまった人がやめるのはとても大変なことで,社会に復帰し,またストレスなどにさらされると覚せい剤の「魅力」を思い出し,使用してしまう人がとても多いのだそうです。そのために,DARCでは,依存症だった者たちが集まり,お互いの体験などを話したり聞いたりするグループミーティングの場をつくり,それに参加することを治療の中心にしています。「とりあえず今日1日は使わないようにしよう」と言い合う仲間が必要なのだそうです。
 最近では,再び覚せい剤を使用しないように,刑務所内や保護観察中に医療機関や民間団体等の連携による継続的長期的指導や支援を行っているようです。しかし,私たちが覚せい剤依存症という病気をよく知り,それを克服することの難しさを理解しない限り,再び覚せい剤を使用する人はいなくならないのではないかと思いました。

(文責:匂坂)