裁判官を増やす
全国には52の地方裁判所と家庭裁判所がありますが,裁判官の数(簡裁判事を除く)は2850人です(2011年)。
「裁判官1人あたりの国民数」を国際的に比較すると次のようになります(2011年)。
日本 44,932人
イギリス 15,074人
フランス 10,964人
アメリカ 9,553人
ドイツ 4,070人
このように日本では裁判官の数は,ドイツの1/11,イギリスの1/3にすぎないのです。
そこから生まれるものは,裁判官の仕事の過重な負担です。1人の裁判官が担当している民事事件の数は300件とも言われます。このほかに事務的な仕事,出張を伴う業務などがあります。どんなに優秀であっても,ものには限度があります。準備のために仕事を官舎に持ち帰ることも珍しくないようです。裁判官は疲れています。
その結果は,当事者の主張や証拠が十分に検討されずに判断されてしまうおそれに結び付きます。これは裁判を受ける市民にとって放置できないことです。
特に裁判官が一人しかいない支部では,民事,刑事,家事,執行,保全などすべての事件を担当しなければなりません。一体いつ昼食を摂るんだろうと心配になるときもあります。
長野県下では,現在裁判官は22名いますが,3人の裁判官で審理する合議事件を組めない上田と飯田では他の支部から裁判官が応援(転補)に来たり,それ以外でも他の支部へ応援に行くことが常態化しています。
司法は立法,行政とともにこの国の三権分立の柱ですが,国家予算92兆3000億円のうち司法予算は3200億円余で,0.35%にすぎません(平成22年度)。長野県の予算は8412億円(平成24年度)ですから,その半分にも満たないのです。
長野県弁護士会は,いま,県内の裁判官を少なくとも11名(うち簡裁判事6名)を増やすように運動しています。
裁判官だけでなく書記官や事務官,調査官といった人的にも充実した裁判所が必要とされています。
(文責:武田芳彦)
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