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裁判・司法とシネマ 2 「12人の優しい日本人」 2012年3月

裁判は、映画のテーマとしてよく取り上げられます。ドラマチックであることから映画のネタになりやすいのでしょう。前回に引き続き、今回は「12人の優しい日本人」(1991年 日本)という映画をご紹介したいと思います。

 裁判員裁判も日本で導入されてから今年で3年目になります。しかし、「12人の優しい日本人」は、制作が今から約20年以上前に、日本でもアメリカと同じような陪審員制度があったら…という架空の設定で、法廷喜劇のような映画が作られています。
 もちろん、当時は裁判員裁判が日本で導入されるなんて誰も思わなかった時代です。
 名作と呼ばれる「十二人の怒れる男」(1957年 アメリカ)を元に、それをパロディ化した映画で、中原俊監督、三谷幸喜原作・脚本です。

 内容は、ある陪審審理(有罪か無罪かについて裁判官を加えずに市民だけで決める)のために、たまたま招集された市民12人が、ある男性の死をめぐって事件か事故か、有罪か無罪かについて激論を交わすというものです。
 話の展開が、現実にこんな話があるのかと突っ込みたくなりますが、いつの間にか自分も陪審員の一員となった気持ちになり、気付いたら有罪か無罪かを真剣に考えてしまっていました。今は売れっ子監督の三谷幸喜の脚本ですので、笑いなしでは見られませんが、現在の裁判員裁判を考える上でも、とても勉強にもなる映画です。
 「裁判員裁判なんて自分には関係がない」、「裁判なんて難しくて…」と思われる方でも、十分に楽しめる映画だと思います。

 映画の途中から、豊川悦司演じる陪審員の一人(自称:弁護士)が当初は何も議論に関心を示さなかったのに、途中から積極的に議論に関わってくるあたりが見どころです。
 はたして12人が激論の末に出した結論は、有罪?それとも無罪?

(文責:宮下)