司法修習生と司法修習給費制の意味 2011年12月
みなさんは「司法修習生」をご存じでしょうか。
司法試験に合格した人は裁判官,検察官,弁護士等の各職業に就く前の約1年間,国家公務員に準じた身分で研修を受けますが,その期間中研修生は「司法修習生」と呼ばれます。
司法修習生はそれぞれ各都道府県に割り振られ,その地の裁判所,検察庁,弁護士事務所の現場で法律家の仕事を見聞します。具体的に言うと,裁判所の裁判,検察官の取調べ,弁護士の法律相談等に同席して実務の現場を体験するのです。例えば検察官志望の人が弁護士業務(それも民事事件)の研修を受ける等,自分の志望外の職業についても研修を受けるため,将来就く職業とは異なる職業の考え方や仕事の流れについても把握することができ,仕事をする上で自分の地位・役割に固執することなく広い視野で物事を考えることができるようになります。
このような司法修習生に関して,平成23年までは国からお給料が出ましたが(これを「給費制」といいます),平成24年度以降司法修習生にはお給料は出ず,生活費を貸す仕組み(これを「貸与制」といいます)に変わりました。たしかに現在のわが国の財政は非常に厳しく,できるかぎり支出を減らしていかなければならないのかもしれません。
しかしながら弁護士が困っている人々,とくに社会の少数派である人々についてその権利を守り,わが国の民主主義のために重要な役割を担っていることからすると,弁護士の卵である司法修習生の現在及び将来の生活を不安定にする貸与制という政策には疑問があります。
ここ数年日本弁護士連合会及び各都道府県の弁護士会は給費制の維持を国民の皆さんに訴える意見表明,集会を行ってきました。私もその活動に加わってきましたが,その際一番感じたことは,今まで弁護士に仕事を頼んだ経験のある方,日ごろ弁護士と一緒に仕事をされている方は給費制維持(復活)活動に積極的に賛成,協力してくださるということです。その方々は弁護士がその人たちの権利を実現するために尽力してくれる強い味方であること,そして優秀な弁護士が身近に必要であることを強く感じてくださっているからだと思います。
以前に比べて弁護士は日本の社会に浸透してきました。そのことはマスメディアに弁護士が多く登場していること,弁護士出身の政治家が増えていること等の現状からみなさんも感じておられることと思います。そして今後弁護士はより一層社会に進出しその役割は増していきます。そのような弁護士の卵である司法修習生が充実した研修を行い,国民のみなさまのお役に立てるように育つため,ぜひとも司法修習生給費制復活活動にご理解をいただきたいと思います。
(文責:山崎)
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