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「著作者」「著作権者」は、著作権の問題を考える上では区別して考える必要があります。

1 著作者・・・「著作物を創作する者」をいいます(2条1項2号)

  著作権者とは、著作権のうちの「著作財産権」を有する者をいいます。

  例えば、夏目漱石が「こころ」を執筆した場合、執筆時点では著作者は夏目漱石であり、通常は同時に著作権者となります。なお著作権法では原作品に著作者として氏名等を表示した者を著作権者として推定する規定があります(14条)。
  夏目漱石が「こころ」に「作者:夏目漱石」と表示した場合には、夏目漱石が著作者でないという反証が成功しない限り、夏目漱石が著作者であると判断されます。


2 但し、著作財産権は、譲渡することができます。

  著作権には「著作財産権」と「著作者人格権」の2つがあり、著作財産権は、財産権の一種ですから、他人に譲渡(売ったりあげたりすること)できるのです。



  したがって、その場合には、「著作者と著作権者が異なる」という状態が生じることになります。
  例えば、夏目漱石が森鴎外に「こころ」の著作財産権を売却したとします。
  その場合、「こころ」の著作者はあくまで漱石ですが、著作権者は鴎外ということになります。

  この場合「こころ」を本として販売できるのは鴎外で、著作者である漱石が、鴎外の許諾なく、本として販売すると鴎外の著作権侵害となり、漱石が鴎外に損害賠償しないといけません。

3 他方、漱石はあくまで「著作者」として「著作者人格権」という権利は保持しています。

  「著作者人格権」は他人に譲渡することはできず、一身専属的な権利といわれています。

  著作者人格権には、公表権(18条)、氏名表示権(19条)、同一性保持権(20条)といった権利が含まれます。

  例えば、同一性保持権は、著作者の意に反して著作物の変更、切除その他の改変を受けない権利というものです。

  先ほどの例でいうと、鴎外が自分の趣味にあわないとして、漱石の意に反し、「こころ」の文章を削ったり、付け加えたり、ストーリーを変えてしまうとそれは同一性保持権の侵害となってしまいます。

  著作権者とはいえ、著作者の意に反して著作物をいじってはいけないということですね。


4 著作者人格権の侵害が問題となった裁判例に「中田英寿事件」(東京地判平成12年2月29日)があります。

  これは、出版社が、著名なサッカー選手である中田関連の本を発行するにあたって、中田選手の中学校の卒業文集の詩を無断で掲載したという事件です。

  著作者人格権の「公表権」の侵害について、裁判所は、当該卒業文集が生徒や教諭などに300部以上配布されたことを踏まえ、当該「詩」は、すでに公表された文章であって、当時公表に同意していた以上、あらためてそれを掲載したとしても「公表」されたことにはならず、公表するかどうかを決定する公表権の侵害にはあたらない、と判断しました(なお、この件では、中田選手のプライバシー権、著作権(複製権)の侵害は認められています。)。

(一由)