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お墓と法律

時折、お墓に関する問題についてご相談を受けることがあります。

多くは、相続において、誰がどうやってお墓を引き継ぐのか、今後の管理をどうしていくのかといったことですが、相続とは関係なくお墓についての法的な問題もあります。

1 お墓に関する法律
 お墓に関しては、基本的な法律として「墓地、埋葬等に関する法律」(通称「墓埋法」)があります。

 その第一条には以下のような規定があります。

 第一条 この法律は、墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする。

  国民の宗教的感情への適合
  公衆衛生その他公共の福祉


  という2つの観点が重要であることがわかりますね。

2 主な規制
 お墓は、上記1のような意味で公的な側面を有していますので、いろいろな規制があります。

(1)埋葬は、死亡後24時間経過した後でなければしてはならない(3条)

 万が一 にもまだ生きている人を埋葬してしまってはいけませんので、このような規制があります。昔、ドリフのコントで棺桶の中の死者が生き返るというものがありましたよね。

(2)埋葬、火葬または改葬は、市町村長の許可なくしてはいけない(5条)
   墓地外の埋葬又は火葬場外での火葬の禁止(4条)


   公衆衛生等の観点によるものと考えられます。
   なお、場合によっては、死体遺棄罪(刑法190条)に問われることもあります。

(3)墓地、納骨堂又は火葬場の経営等には都道府県知事の許可が必要(10条)

 これも、公衆衛生やお墓の公的な側面からの規制であると考えられます。
 なお、個人墓地(個人の所有地を墓地とする場合)がここでいう「経営」に含まれるのかは、疑問がありますが、行政としてはそのような場合にも許可を必要としていますので、この見解に従っておくのが無難といえます。
 現在は、特に環境や公衆衛生の観点から、個人墓地の新たな創設は例外的な場合を除いて認められない(許可されない)とされています。
 具体的な基準等については、各自治体の条例で定められています。
 例えば、長野市の条例はこちらです。

(4)埋葬、火葬等についての応諾義務(13条)

 墓地や火葬場の管理者は、正当な理由がなく、埋葬や火葬を拒否することが禁止されています。

(5)罰則
 例えば、上記(3)の10条に違反して、無許可で墓地等を経営すると6ヶ月以下の懲役又は5千円以下の罰金に処せられます(20条)。他にも刑事罰が定められている規制があります。

2 葬送の自由
 どのように、自分を葬送してもらいたいか/家族をどのように葬送したいかは、個々人の宗教的信条や価値観によって自由に決定できるのが原則です。この点、近年価値観や宗教観が多様化していることから、散骨の可否やイスラム教に則った土葬の可否なども新たな法的問題として浮上しています。

 例えば、日本在住のイスラム信者の方の土葬についての報道。


 土葬については、以前は日本でも土葬が行われていたこともあり、「埋葬」には土葬が含まれると解されています(2条1項)。
 ただし、各自治体の条例で土葬を禁止しているところもあるようで、「法律で許されているはずのものを条例で禁止することができるのか」という憲法に関係する難しい問題もありそうです。

 散骨についても、これを直接規制する法律は現在のところは存在せず、不相当な態様でなされない限り死体遺棄罪にもあたらないとされていますが、他人の所有地に許可なく散骨することは違法行為となる可能性が高く、控えるべきでしょう(私有地の場合、そもそも無許可での立ち入り自体が許されません)。
 では自己所有地であればどうなのか、公有地であればどうか、など難しい問題がありますが、ここでは問題の指摘にとどめておきたいと思います。


 お墓の問題についても、ご相談を受けています。
 お気軽にご相談ください。

(一由)