TOP > 今月のコラム一覧 > 114

遺言の有効・無効

 遺言(遺言書)が発見された場合、関係者の中から「この遺言書は無効ではないか?」という問題が提起されることがあります。

 遺言は、法律に定められた要件を満たしていないと成立しない行為であるため、何らかの疑義が発生すると遺言の有効・無効について裁判で決着をつけないといけなくなってしまう場合があります。

1 遺言が無効となってしまう場合
(1)民法の定める形式要件を 満たしていない(方式違背などといいます)
  具体的には・・・・
  自筆証書遺言の場合:自書されていない、日付がない、押印がないなど
  公正証書遺言の場合:証人2人の立ち会いがない、「口授」がないなど

(2)遺言当時に、遺言能力がなかった場合
  例えば、認知症が進んでおり、遺言できる能力がなかったような場合です。

(3)偽造
  遺言者本人が遺言書を作成していない場合


2 遺言の有効無効を争う場合の手続
(1)基本的には、家庭裁判所に家事調停を申し立てます(調停前置)

(2)調停で紛争が解決しない場合又は状況からして調停が無意味であると判断できる場合には、「遺言無効確認の訴え」という訴訟で決着する必要があります。この訴訟は、家庭裁判所ではなく地方裁判所で行うことになっています。


3 遺言無効確認訴訟は、私の経験からいって、なかなか興味深い訴訟です。

 この訴訟には、「当のご本人が亡くなってしまっている」という特徴があります。

 したがって、偽造パターンにせよ遺言能力のパターンにせよ、さまざまな間接事実の立証の積み重ねから、合理的な推認をして、遺言無効が争われることが多くなります。

 無効を主張する側/有効を主張する側、どちらの立場にせよ、そのあたりは、弁護士の腕のみせどころといえます。

 様々な資料を調べて、丁寧にその遺言の作成経過などをみていくと、面白い事実が見つかる場合もあり、やりがいのある事件といえます。


4 遺言について弁護士が関与する意味

 逆にいうと、遺言の作成にあたって遺言無効の紛争を招くような手法は注意しないといけません。
司法書士や税理士ではなく、弁護士が遺言作成に関与する意味は、このような紛争事案の扱いからくる経験がものをいうことにあるといえます。

(一由)