特に、山林、農地などは、農業・林業を継がない人も多くなっており、管理が困難になってしまう土地が増えています。一般に、山林・農地は売却しようと思っても、買い手がつかなかったり、農地法の規制等で売却も難しいことがあります。
山林であれば森林組合への管理委託、農地であれば、農業開発公社による農地中間管理事業制度の利用なども考えられますが、委託や貸付の場合、所有権者としての責任は負いつづけることになります。
1 そのような場合に相続した土地を放棄して、国に引き取ってもらうという制度が新しくできました。
「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」です。
2 概要
(1)相続等によって取得した土地の所有権を「国庫に帰属させることの承認申請をします
申請者は所有者(共有者の場合は共有者全員)
(2)申請ができない土地
①建物のある土地
②担保権や用益権が設定されている土地
③通路として他人が使用することが予定される土地
④特定の有害物質による汚染がある土地
⑤境界が明らかでない土地や所有権の帰属、範囲に争いがある土地
(3)調査の上、申請が適法であり、却下事由や一定の不承認事由がない場合には、法務大臣は申請を承認しなければなりません。
不承認事由の例
①崖があって管理に過分の費用又は労力を要するもの
②管理処分を阻害する工作物、車両、樹木などがある土地
③除去しなければ管理、処分に支障が生じるような有体物が地下にある土地
④隣接土地所有者等との関係で、争訟が必要な土地
⑤その他、通常の管理または処分に過分の費用又は労力を要する土地
(4)承認は一筆ごとになります。
(5)承認があった土地については、10年分の管理費用相当額(負担金)を30日以内に納付する必要があります。
(6)虚偽の事実申告をするなど不正の手段で承認を受けた場合、取消の措置があります。
また、場合によって、損害賠償責任を国に対して負うことがあります。
要するに、①放棄しようとする土地に問題がなく、②10年分の管理費用を納付することができれば、持て余す土地を国に引き取ってもらうことができるということになります。
実際上、②についての具体的な金額がどうなるかが、この制度がきちんと生きるかどうかの分かれ目になりそうです。具体的な算定は政令で定めるとされていますので、今後も注目したいところです。
(一由)