今回のコラムでは、大雨により浸水被害が発生した場合に当面必要となる知識をご紹介します。
〇まずは体力の回復を
復旧作業には体力が必要です。また、堆積した土砂や泥水には細菌が含まれており、体力が落ちていると感染症発症のリスクが高まります。
避難生活で体調を整えることは簡単ではありませんが、まずは体力を回復させることに努めてください。
〇復旧作業の前に、写真や動画をとにかく撮影してください
自宅や職場が被害に遭った場合、一刻も早く片づけを始めたいところです。ですが、その前に必ず写真や動画を撮ってください。被害の詳細が分かるように、あらゆる角度・距離から撮影してください。
後に説明する罹災証明書や、自身で加入している保険に基づく保険金の請求などでは、実際の被害の程度が極めて重要になります。しかし、復旧作業が進んでいくと、被害の具体的状況が分からなくなってしまいます。そこで、後日になっても被害の状況が詳細にわかるように、写真を撮影しておくことが不可欠です。
〇権利証・通帳・実印・保険証を紛失しても心配いりません
権利証を紛失しても不動産の権利は失われません。事情を法務局に相談してください。
通帳や実印を紛失しても預貯金は失われません。事情を銀行に相談してください。
保険証を紛失しても氏名、生年月日等を医療機関に伝えれば保険診療を受けられます。
このように、大切な書類を紛失しても心配はありません。
〇罹災証明書を申請してください
罹災証明書は市町村が被災状況を調査して発行する書類であり、災害による被害の程度を証明するものです。
罹災証明書は公的支援を受ける際に不可欠な書類です。例えば、市町村などからの給付金や義援金、税金の減免などにあたり罹災証明書が必要となります。
罹災証明書は原則として被災者が申請することにより発行されるものです。市町村で申請の受付が始まったときは、速やかに申請することをお勧めします。
〇修理の依頼は慎重に
建物に被害があった場合、できるだけ早く業者に修理の依頼をしたいところです。
従来から付き合いがあり信頼できる業者であれば良いのですが、そうでない場合には焦りは禁物です。私が被災地で相談を受けてきた中では、修理の依頼をしたが工事の内容や代金に納得がいかないという相談が一定の割合を占めていました。工事内容や見積りについて十分な説明を受け、納得した上で依頼をすることが重要です。
また、修理工事の需要の高まりを逆手に取り、悪徳商法と言わざるを得ないような営業活動をする業者もあるようですので、注意が必要です。
「弁護士の仕事は裁判や交渉であり、災害からの復旧・復興とは関係がない」というイメージがあるかもしれませんが、そのようなことは決してありません。被災して困った、というときの相談先として弁護士も選択肢に加えていただければと思います。
(坂井田)