市民の権利の現状については、交通事故、労働災害から消費者被害、倒産事件、子どもの人権など、権利の類型別に現状分析をしています。
初版から来年で20年になります。
交通事故については、初版では、損害保険の支払いに弁護士が関与しているのはごく僅かであるとしたうえで、ほとんどが保険会社の支払基準での示談によって解決してしまっていると述べています。そして、その結果、被害者の受ける損害賠償金は裁判での基準とは百万円、千万円の単位で低くなってしまっているとしています。被害者の権利を守るために、弁護士の関与の重要性が指摘されています。
この10年間の長野県内の交通事故の発生状況は末尾の表のとおりです。2002年当時約1万4000件(死者213人)だったのに比べると毎年減少し、2020年は件数で34%に、死者数で21%になっています。
シートベルトの着用率の向上、事故直前の車両速度の低下、飲酒運転等の悪質・危険性の高い事故の減少、歩行者の法令遵守等が要因とされています。
被害者の権利保護についても、市民の権利意識の高まりや弁護士に相談することが権利保護につながるという理解が浸透してきたこと、とりわけ損害保険会社の弁護士費用保険が普及してきたことが大きな影響を果たしたということができます。
法知識の普及、弁護士の関与、それを容易にする制度が、20年をかけて市民の権利擁護に結びついたといってもよいでしょう。
(武田)