2 背景として、これまで「相続人」が、被相続人の財産の維持増加に特別の寄与をした場合の「寄与分」の制度では、実情にあわず不十分であったという事情があります(名前は似ていますが、寄与分(相続人)と特別寄与料(相続人以外の親族)の制度はまったく別のものです)、
例えば、親Aに子どもB、Cがいて、Aが亡くなった場合の相続について、Bの妻であるDが、親Aの療養看護や家業の手伝いに無償で貢献していた場合、従来の「寄与分」の制度ではDの貢献を適切に評価することはできない場合がありました。なぜなら、寄与分は「相続人」にしか認められない制度であるため、相続人でないDには認められないからです(そのため、実務上、Dの貢献はBの貢献と同視して寄与分を認定することもありましたが、裁判所の裁量次第という不安定な部分がありました。)。
「特別寄与料」の制度ができたことで、Dが正面から特別寄与料の請求をすることができます。
3 特別寄与料の要件は以下の通りです。
ア 請求人が被相続人の親族であること
「親族」は6親等以内の血族、三親等内の姻族等をいいます。
※法律上の「親族」ではない内縁の妻、同性パートナーなどは現状、特別寄与料を請求することはできません。
イ 無償で療養看護、その他の労務を提供したこと
主として想定されるものとして、療養看護や家業の手伝いをしたことがあります。
なお、ケースバイケースですが、給与を得ていたり、遺言で貢献にみあった遺贈を受けている場合などは、「無償」とはいえないことになります。
ウ 被相続人の財産の維持または増加
例えば、療養看護をしたことで、払わなければならないはずの施設費用を払わなくて
済んだ、職業的介護者の費用が発生しなかった、などの事情が必要です。
エ イとウの因果関係
特別寄与料請求者の行為が、財産的な効果に結びつかない場合には認められません。
4 特別寄与料の請求には、期間の制限があります(除斥期間)。
具体的には、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ったときから6ヶ月以内又は相続開始の時から1年以内に、家庭裁判所に調停ないし審判の申立てをおこなう必要があります。
この期間制限は、時効期間ではありませんので、延長は認められません。
かなり短い期間制限となりますので、ご留意ください。
5 その他、特別寄与料の請求については、
ア 請求する相続人の誰を相手方とするか
イ どこの裁判所に請求すべきか
ウ どのような事情があれば特別寄与料が認められるか
どのような裏付け資料を提出すべきか
エ どのように裁判所が特別寄与料を算定するか
オ 遺産分割事件の動向とどう対応するか
などの判断が必要になります。
これらの事項は、専門的な判断となりますので、弁護士に相談することをおすすめします。
(一由)