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「死後離婚」について

 先日の新聞に亡夫の親族との関係に悩む女性の一文が載っていました。

離婚届 イメージ写真 夫の存命中から「嫁」として嫌な思いを強いられてきたうえ、更に夫の死後も続くのかと悩んできたというのです。
「姻族関係終了届」という制度があることを知り、まさかと思って市役所の戸籍係に聞いたところ、若い担当者は「そんな届出用紙はありません」と答えたそうです。代わって出た上役の人が「あります」と言ったそうです。この女性のまわりでも知っている人はいなかったそうです。

 この一文を読んで、私たち法律家が当たり前に知っている法律や制度が社会にはまだまだ行きわたっていないことと、その知識がないために長い年月を悶々として悩んでおられるのだということが分かりました。

 「死後離婚」という法律用語や制度があるわけではありません。
 夫が亡くなった場合でも亡夫の両親や兄弟姉妹、その子との親族関係(姻族といいます)は続きます。しかし、この関係は妻が姻族関係を終了させる意思を表示することによって終了します(民法728条2項)。  
 これを姻族関係終了の意思表示といいます。

 この手続きは簡単です。市役所の戸籍の窓口で姻族関係終了の届出用紙をもらって記入し、夫の死亡を証明する戸籍謄本、印鑑、免許証などの本人確認の資料を提出又は提示するだけで足ります。戸籍に姻族関係終了の記載がされて完了です(戸籍法96条)。裁判所の許可なども必要ありません。
 ちなみに、婚姻前の氏に戻ることもできます(同751条1項)。
 また、届出期間の制限もありません。
 夫の相続や年金受給にも影響はありません。
 夫の親族のお墓(一般的には夫も入っているお墓)に入ることはなくなります。夫の親族の冠婚葬祭などの交際もしなくてよくなります。
 夫の親の扶養義務もなくなります。
 亡夫の親族との付き合い方はさまざまですが、心の負担になっているときはこの制度を利用されることもお勧めです。
 冒頭の女性は「気持ちがとても楽になりました」と書いておられます。

(武田)