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 子どもをめぐる法律 2011年6月

 先月に引き続き、今月も子どもの話題をお伝えしたいと思います。
 去る5月27日に、国会において全会一致で「親権停止」に関する民法改正法案が可決・成立しました。その内容は、近年増え続ける児童虐待から子どもを守るべく、親の虐待が認められた場合にその親の子どもに対する親権を最長2年間停止することができるというものです。

 これまで、民法の条文にも「親権の喪失」(834条)という制度がありましたが、喪失期限の定めがなく、子どもと親とのその後の関係修復可能性を考えると躊躇してしまい、使い勝手の悪いものでした。この10年で児童虐待が約4倍にも増加しているのにも拘わらず、最高裁判所が把握しているだけで、全国で年間数件しか使われていなかったとか・・・。
 また、昨年大阪で発生した母親による育児放棄の末、幼い2人の子どもを餓死させてしまった事件も相まって、児童虐待防止に少しでも役立つよう行われたのが今回の改正でした。

 改正の主な内容としては、児童福祉法の改正とリンクさせ、親権の一時停止(最長2年で延長も可能)や親権を制限することができる請求権者の拡充(子ども本人や未成年後見人など)、児童養護施設長や児童相談所長が親権者の意思に反しても必要な措置がとれるなどの権限拡大です。
 これまで児童虐待を如何に防ぐかが社会問題となっていたことに照らすと、大きな第1歩であると思います。

 一方、子どもをめぐる大きな問題として、「非嫡出子」の問題もあります。「非嫡出子」とは、あまり適切な表現ではないかも知れませんが、いわゆる婚外子のことであり、法律上婚姻している夫婦の間で出生した子ではない子のことを言います。
 民法では、この非嫡出子と嫡出子との間の相続割合について、「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし」(900条4号但書)として、明確に差別しています。
この差別が、憲法14条の定める平等原則に反するのではないかということがこれまで幾度となく裁判でも争われてきました。
 最高裁判所は、平成7年7月5日判決で、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものとして、不合理ではないと判断しました。しかし、15名の裁判官のうち、5名は反対意見を述べており、また、子どもの出生に関する差別として、子どもは親を選べないことを理由に平等原則違反であるとの世論の声も高まっていました。
 昨年7月7日に最高裁は、再度、大法廷へと審理を移すことにし、いよいよ違憲判決が出されるのではないかと世間の注目を集めていましたが、どうやら今年の3月に当事者間で和解が成立したらしく、最高裁の憲法判断はされないことになってしまったようです。
 将来的には、違憲判断か、法律改正が待たれるところですが、法律も子どもも社会の実情に合わせて成長・発展していくという点で共通しているのかなと感じる今日この頃でした。

(文責:宮下)