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刑事弁護とは④

今回は、「刑事弁護とは」のシリーズの第4弾として、裁判当日の流れについてご紹介します。

〇裁判への出席
 裁判の日程が決まると、裁判所から日程が通知されます。身柄が拘束されている場合は直接本人に通知書が渡されます。身柄が拘束されていない場合(在宅事件と言われます)は裁判所から通知書が郵送されます。
 当日は時間に余裕をもって裁判所へ行くのが望ましいです。私が担当する事件では、開始時間の30分ほど前には裁判所へ来ていただくようお願いをしています。

〇冒頭手続き
 開始時間になると裁判官が法廷に入ってきます。裁判官が入廷する際には、全員が起立するのが通例となっています。
 全員が着席すると、裁判官から被告人の方に対し、証言台の前に移動するよう指示があり、人定質問という手続きが始まります。人定質問では、氏名、生年月日、本籍、住所、職業などを質問されますので、一問一答形式で回答します。ここで詰まってしまっても特に問題はありませんが、上手く答えられないことで動揺してしまう可能性があるので、裁判前に起訴状を読んで確認しておいた方が良いでしょう。
 人定質問が終わると検察官が起訴状を朗読します。朗読終了後、裁判官から被告人の方へ黙秘権の説明があります。そのうえで、起訴状に記載されている事実に間違いがあるか否か、と裁判官から質問されます。これがいわゆる罪状認否です。罪状認否は裁判の方向性を示すものなので、弁護人と事前にしっかりと打合せをしておくことが必要です。
 ここまでの手続きが完了すると、被告人の方は席に戻るよう指示されます。

〇証拠調べ
 まず、検察官が冒頭陳述を行います。冒頭陳述は、検察官が考える事件のストーリーを説明するものであり、検察官が証拠により証明しようとする事実を明らかにするものです。一方、弁護人や被告人も冒頭陳述をすることができますが、事実関係に争いが無い事件では冒頭陳述を行わないのが通例です。
 次に、検察官から裁判所に証拠の取調べを請求します。裁判官は弁護人の意見を聞いた上で、証拠を取り調べるか否かを決定します。
 続いて、弁護人から裁判所に証拠の取調べを請求します。裁判官は検察官の意見を聞いた上で、取り調べるか否かを決定します。
 証拠の取調べは、書類については朗読(要旨の説明のみに留まることもあります)、証人については尋問により行われます。

〇被告人質問
 証拠調べが終わると、被告人の方に対する質問が行われます。質問は、弁護人→検察官→裁判官の順に行われます。
被告人質問は被告人自身の意見や主張を述べられる貴重な機会ですので、事前に弁護人とよく打合せをしておくことが必要です。一方で、検察官は、被告人の意見や主張を突き崩そうと質問をしてきますので、その対策を考えておくことも重要です。

〇意見陳述
 以上の手続きが全て完了すると、当事者から意見を述べます。
検察官の意見陳述は論告と呼ばれます。論告の最後には、検察官が相当と考える刑罰が示されます(いわゆる求刑です)。
 弁護人の意見陳述は弁論と呼ばれます。事実関係に争いのない事件であれば、弁護人が相当と考える刑罰を述べることもあります。
 最後に、被告人の方が自分の言葉で意見を述べる機会があります。どのようなことを話すのも自由ですが、事前に弁護人と相談しておいた方が良いでしょう。

〇判決
 すべての手続きが完了すると、あとは判決を待つことになります。
 事実関係に争いのない軽微な事件であれば、冒頭手続きから意見陳述を1日で行い、2週間から1か月後に判決の言渡しの日が設けられることが通例です。一方、裁判員裁判の事件や否認事件では、手続きに相当の日数がかかることもあります。


 これまで4回にわたり、刑事弁護についてお話をしてきました。刑事弁護についてはこれでいったん区切りにしたいと思います。
 身内が逮捕されてしまった、犯罪に巻き込まれてしまった、といったことはなかなか人に相談できることではありません。しかし、弁護士には守秘義務がありますので、相談が第三者に漏れることはありません。見通しが立つだけでもかなり気持ちが落ち着くと思いますので、まずはご相談ください。

(坂井田)