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裁判・司法とシネマ(4) 映画「告発」

映画「告発」(原題:「Murder in the First」)は,アメリカ合衆国のサンフランシスコにあったアルカトラズ刑務所で起った囚人虐待事件を描いたアメリカ映画です。

 アルカトラズは,ギャングのボス,アル・カポネも入っていた凶悪犯を収容する孤島に作られた刑務所でした。ヘンリー(ケヴィン・ベーコン)は,両親と死に別れ,幼い妹を守るために5ドルを盗んだ罪状で25年の懲役刑を宣告され,アルカトラズ刑務所に収容されていましたが,そこは所長や刑務官によって恣意的な暴行,虐待が日常的に行われる地獄のような場所でした。ヘンリーは,ある日そこを仲間の囚人と供に脱走しようとしますが,計画が発覚し,手ひどい懲罰を受けます。脱走できないように副所長によりアキレス腱を切断され,3年以上も光のとどかない懲罰房に放置され,糞尿にまみれて生活することを余儀なくされるというものでした。懲罰房から出たヘンリーは,精神状態に異常を来し,食事中に外の囚人をスプーンで殺害し,今度は殺人罪に問われます。

 新人弁護士のジェームズ(クリスチャン・スレイター)は,企業弁護士として活躍する弁護士の兄から「つまらない事件だがやってみるか」と事件を紹介され,ヘンリーの弁護人を担当することとなりました。ジェームズはヘンリーに面会し,アルカトラズでの仕打ちを聞き,弁護士として,これはつまらない事件などではない,刑務所の囚人に対する虐待を法廷で告発し闘わなければならない,と考えるようになりました。ヘンリーは,刑務所から報復されることに怯え,ジェームズの弁護方針を拒絶します。刑務所での人権侵害を法廷で告発することは,国家を敵にまわして闘うことを意味します。ジェームズは,アメリカ合衆国を敵に回すなどとんでもない,と弁護士である兄からも説得されましたが,はねつけます。兄からは事務所を追い出され,裁判を妨害されるようにまでなりました。裁判に絶望し,疲れ切ったヘンリーも,「国家を敵にまわして裁判を闘うよりは死刑にしてもらったほうが楽だ」とジェームズに述べ,「自分は訴訟で勝つことよりもただ友達が欲しかった,自分の話を真剣に聞いて貰える友人(ジェームズ)に会えたからそれで十分だ」「安全圏に身を置いて,自分を利用するな」と揺れる心情を吐露しますが,ジェームズは,政府の雇った暴漢に暴行を受けるなどしながらもヘンリーを励まし,法廷で人権侵害を放置した合衆国政府を告発し,ヘンリーを最後まで弁護することを決意します。「アルカトラズ刑務所の所長,副所長,そしてアメリカ合衆国をヘンリー・ヤングに対する人権侵害で告発する」と法廷で宣言したジェームズは,アキレス腱を切断した虐待の首謀者である副所長との対決に挑み,虐待を追及します。ヘンリーは被告人質問で動揺し,死刑になったほうがいい,アルカトラズに戻るくらいであれば死刑になったほうがましであると絶叫します。

 刑務所での異常な人権侵害を告発したその行方は・・・。
この映画は実話を基にしたもので,その後アルカトラズ刑務所は閉鎖されました。
ぜひご覧になっていただければと思います。

(文責:一由)

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