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食品衛生法改正と漬物製造の許可制
1 2024年6月1日以降、漬物製造が完全に許可制に
食品衛生法の改正により、2021年6月から漬物製造(販売する場合)が許可制となりました。
経過措置として、既存業者については2024年5月31日までは、許可制が猶予されていましたが、その猶予措置もこの5月末でなくなり、現時点では、完全に許可制に移行しています。
2 零細事業者にとっては存続の危機
許可を保健所から得るためには、一定の基準をクリアーした設備や生産体制であることが求められます。
具体的には、①製品の製造場所や保管場所を仕切りなどで物理的に区画する、②手洗い設備は手指が蛇口に触れないセンサー式などの構造にする、③原材料の洗浄設備(シンク)と器具等の洗浄設備をそれぞれ有する(計2槽)など、食品衛生法の基準を満たした施設を用意し許可を取得する必要があることになりました。
衛生管理の手法もHACCP(ハサップ)という国際的な基準に即した形にすることなどが要求されることとなりました。
制度改正の背景には、一部の漬物製造業者において、O157による食中毒が発生し、複数の死者が生じた事件などがあったようです。
政府ではこのような背景を踏まえて、それまで届け出制であった漬物製造業者についても営業許可業種に加えるべきという制度改正となりました。
衛生管理をきちんと行って、安全な食品を市場に提供するというのは、事業者の最低限の義務ですから、この制度改正自体はやむを得ないものであるようにおもいます。
HACCPを農家のおばあさんが導入することのハードルの高さが喧伝されますが、その点に加えて、製造等設備の改修に多額の費用(数百万円以上)がかかるため、金銭的に対応できないという側面も強いようです。確かに細々と漬物をつくっている業者には、数百万円を投資して設備を改修することは現実的ではありません。
自治体によっては、設備の改修などに助成金を出して、伝統的な漬物製造事業を援助しようという動きもありますが、それでも負担が大きいとして廃業を選択する業者も少なくないようです。助成金や補助金は補助率というものが設定され、かかった費用の3分の1までといった上限が定められているものがほとんどです。したがって自己負担なしでというわけにはいきません。
農文協のサイトで、漬物事業者の意見を代弁する記事がありますので関心のある方はご覧下さい。
3 漬物の盛んな信州でも影響が?
先日の信濃毎日新聞の記事でも、信州の漬物産業への影響が報じられています。
注文相次ぐ木曽地方の漬物「すんき」、でも高額の設備投資必要で販売断念する人も… 法改正で保健所の許可制に