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令和6年政治資金規正法改正について
自民党における裏金問題等を受けて令和6年に政治資金規正法が改正されています。
今回はその内容の一部をご紹介したいとおもいます。
1 政治資金規正法とは
政治資金規正法は、昭和23年に制定された比較的古い法律で、腐敗しがちな政治とカネの問題を、①政治資金の収受、②国民への情報公開と国民による監視という2つの側面から規制しようとする法律です。なお法律名としては「規制法」ではなく「規正法」が正しい名称です。
規正法は、その後、国会議員等の政治資金の不祥事が起こるたびに改正されており、大きな改正としては平成19年が最後となっていました。
平成19年改正以降、長らく改正がないまま、今回の裏金問題を受けて令和6年改正に至ったという流れになります。
2 令和6年改正の概要
(1)国会議員関係政治団体の代表者の責任の強化等
これまでの規正法は「会計責任者」の行為を規制することに主眼が置かれており、政治家本人(だいたい政治団体の代表者が政治家であることが多く、会計責任者はそれ以外の人、例えば秘書などがなっていました)が責任を問われることがほとんどありませんでした。例えば、本来政治資金収支報告書に記載すべき政治資金の受領を故意に記載しなかった場合でも責任を問われるのは基本的に会計責任者であって、代表者は「知らなかった」「今後気をつける」「秘書がやっていたことで自分は関与していない」と弁解すればそれ以上の法的責任をとらなくて済むことになっていたのです。
例外的に、会計責任者に虚偽記載を指示したり共謀していた場合にだけ責任が問われるのですが、その立証は非常に難しく、事実上政治家の法的責任を問うことは難しい法制度になっていました。
このような現状を踏まえ、令和6年の改正では、国会議員関係政治団体の代表者は、随時又は定期的に、会計責任者を監督すべきことが定められました(19条の12の2)
また会計帳簿等の随時又は定期的な確認義務も規定されました(19条の12の3)
(2)会計責任者による報告書提出時の代表者への説明と代表者による確認書の交付(19条の14の24項、25条5項)
代表者(国会議員)に対して会計責任者がきちんと説明をしないといけないことと、説明を受けた国会議員が確認書を会計責任者に交付することとなり、これらの義務に違反すると罰則が科され、公民権の停止が科されることになりました(25条3項等)。
(3)国会議員関係政治団体の政治資金の保管方法を預貯金とすること
現金管理だと不透明な管理の温床となるため、一定の場合を除き金融機関への預貯金で管理することが義務づけられました(19条の8の2)
(4)政治資金パーティの対価支払者の氏名等の公表基準の引き下げ(従前の20万円超⇒5万円超へ引き下げ)、対価の支払い方法の制限
政治資金パーティの透明性を高めるための規制が強化されました(22条の8の2)
(5)政党から公職の候補者個人に対してなされる寄附の禁止
選挙活動を除く政治活動に関する金銭等の寄附が禁止されました。
3 施行期日
原則として令和8年1月1日からになります(前倒し等例外の場合あり)
4 長野第一法律事務所では、政治資金規正法や公職選挙法に関するご相談も受け付けています。
政治資金規正法については、法的責任を問われなければ良いというものでもなく、違法とはいえないが道義的(政治的)責任を免れないとして、メディアや世論の批判にあうこともあります。法の趣旨にのっとった政治資金の取り扱いに留意しましょう。