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残業代の支払いについて~未払いのマイナスは大きい~
1 残業代未払いのリスク
私(和手)の記事では、最初基本的なことから説明しますが、今回は、企業の方が真っ先に注意しなければならないリスクに関して説明いたします。
以下労働基準法を「法」と表記します。
(1)刑事罰
残業代(時間外割増賃金)を支払わなかった場合、当該企業の代表者や経営者、責任者は、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処す」されます(法109条1号、法37条)。また、会社自体にも罰が科されます(法121条1項)。
このため、残業代未払いは、刑事上の罰となり、最悪代表者が懲役になるリスクもあります。
(2)行政上の指導
残業代未払いは、労働基準法違反に当たるので、監督機関である労働基準監督署の監督を受けることになります。労働基準監督署には、企業に入り臨検する権限があり、帳簿や書類の提出を行わなくてはならないので、その間業務に支障が出るリスクが生じます。
臨検により法令違反などが発見された場合、勧告や指導の対象になり、違反の場合は(1)の刑事罰を科すため刑事訴追される可能性があります。
(3)民事的な問題
未払いの残業代は、支払う必要があり、従業員から遅延損害金を加えて請求されるおそれがあります。
(4)企業に与えるその他の影響
上記以外にも組み合わせで、企業に大きな影響が生じます。
例えば・・・
・従業員が一斉に未払い残業代を請求し、会社の財務状況が悪化する。
・刑事訴追等で報道され、取引先等からの受注や融資を受けづらくなる。
・ブラック企業という風評が生じて、人材確保に困難をきたす
・・・など。
残業代の未払いは、企業へ深刻なダメージを与えることがあります。
2 残業代の未払いを防ぐために
先に述べたように、残業代の未払いは、企業へのダメージが大きいものです。
そこで、残業代未払いが生じないようにするための方法を以下説明します。
(1)残業代制度の確認・・・その前に残業が許されるのかチェックを!
本項目では、当然のようにお金を払えば残業させられるような記載となっていますが、法36条第1項に規定されている労働者の過半数の代表者(又は労働者の過半数で組織してある労働組合)と書面で協定を交わし、同
協定書を労働基準監督署に提出しないと、時間外労働自体禁止です!(所謂サブロク協定を交わす必要があります。)
多くの企業で行われていると思いますが、サブロク協定が無いとそもそも残業自体が違法なので、注意が必要です。
(2)残業代制度の確認
残業代は、通常、実労働時間(業務の時間+更衣や掃除、営業先への移動時間等の業務遂行に必要な準備時間を指します。)に応じて生じます。
しかし、以下の場合には、実労働時間ベースでは無い方法で算出されることもあります。
・事業場外労働のみなし制(外回りやテレワークの場合の制度)
・変形労働時間制・フレックスタイム制
・固定残業代(固定の残業時間と残業代を事前に明示する方法)
- 固定残業代の制度は、事前に残業時間を明示する必要があり、何時間でも固定額で残業させられる制度ではありません!
これらの制度の場合は、通常とは異なる方法で残業代を計算できますが、従業員との合意や制度の明確化、制度と実態の一致が求められます。このた
め、制度だけ用意すれば良いという訳では無く、制度運用が適切に行われているか確認する必要があります。
(3)実労働時間把握の方法
実労働時間について、従業員の自己申告に基づいている企業も見受けられます。しかし、同申告では、実態との乖離が生じ、知らずに未払いのリス
クが生じるおそれがあります。
労働時間の管理は、できるだけ客観的に行われる必要があり、タイムカード、ICカード、PCの使用時間の記録、入退館管理などにより実施することが望まし
いものといえます(厚生労働省のガイドライン「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」でもそのように推奨しています)。
3 経営者の方や担当者の方は自社がどのようなシステムを用いているか確認するだけでな
く、制度設計と実態に乖離が無いかもしっかり確認していきましょう!
長野第一法律事務所では、労働問題に関して、企業側労働者側問わず、ご相談を受け付けています。
自社の残業代支払いに問題無いか、自社に合ったシステムにはどのようなものがあるかなど確認されたい企業の方は、専門知識豊富な所属弁護士が相談に対応しますので、是非長野第一法律事務所にご相談ください。
(和手)