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建設業特集10 下請負契約①~一括下請の禁止-丸投げはダメです-~
前回までの記事では、発注者と請負業者が直接契約することを想定して、説明してきました。
今回からは、発注者から受注した業者が他の業者に建設工事を請け負わせる下請負契約(以下「下請」といいます。)について、説明していきます。
下請には、直接の契約には無かった決まりもあります。今回は、その中で特に大切な“一括下請の禁止”について説明します。
※ 以下、「建設業法」は、「法」、「建設業法施行規則」は、「規則」といいます。
1 一括下請とは?
法22条1項は、「建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。」と定めており、一括して他人に下請させることを禁止しています。
一括下請が禁止されているのは、発注者は当該工事を受注業者が行うものと信頼して工事を発注したにもかかわらず、その信頼を裏切ることになるからです。
また、一括下請を容認すると、中間搾取や工事の質の低下、労働条件の悪化、責任の不明確につながる危険性があることも理由となります。
そして、一括下請に当たる場合とは、
① 元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与することなく
&
② 請け負った建設工事の全部又はその主たる部分について、自ら施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
- 戸建住宅の新築工事について、建具工事以外を他の業者に請け負わせる場合など
or
③ 請け負った工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事について、自ら施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
- 10戸の戸建て住宅のうち1戸を1社に全て請け負わせる場合など
を指します。
2 「実質的に関与」とは?
先の①の実質的に関与とは、元請負人が自ら施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等を行うことを指します。
具体的には、以下の行為を元請負人は行わなければなりません。
※発注者から直接建設工事を請け負った場合
A 施工計画の作成
請け負った建設工事全体の施工計画書の作成、下請負人が作成した施工要領書等の確認、設計変更等に応じた施工計画書等の修正
B 工程管理
請け負った建設工事全体の進捗確認、下請負人間の工程調整
C 品質管理
請け負った工事全体に関する下請負人からの施工報告の確認、必要に応
じた立会確認
D 安全管理
安全確保のための協議組織の設置及び運営、作業場所の巡視等請け負った建設工事全体の労働安全衛生法に基づく措置
E 技術的指導
請け負った建設工事全体における主任技術者の配置等法令遵守や職務施
行の確認、現場作業にかかる実地の総括的技術指導
F その他
発注者との協議・調整、下請負人からの協議事項への判断・対応、請け負った建設工事全体のコスト管理、近隣住民への説明
3 適用除外
民間工事(共同住宅の新築工事を除く)の場合、元請負人が、発注者から予め書面による承諾を得ている場合は、一括下請が可能です(法22条3項)。
他方、公共工事については、一括下請は一切禁止です。
4 違反した場合
通常の建設業法違反は、監督官庁からの指示処分が行われることが多いです。
しかし、一括下請の禁止に違反した場合、一発で営業停止処分や許可の取消を受けることになります。
他にも、経営事項審査に反映できない、管轄する自治体に連絡が行き、入札に参加できないリスクもありますので、絶対に行わないようにしましょう。
5 一括下請は取引先との関係で受注を断りづらい事業者が自己の能力以上に受注することで生じてしまうおそれがあります。
しかし、そのペナルティは非常に大きいものです。決して行わないよう注意して受注していきましょう!
長野第一法律事務所では、下請契約についての相談も受け付けています。
元請業者・下請業者のいずれであっても、契約に不安のある方は、所属弁護士が相談に対応しますので、是非長野第一法律事務所にご相談ください。