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建設業特集6 建設業の特徴⑤~帳簿等の備付け・保存~ 

前回は、建設業許可を受けた後に必要な標識の設置に関して、説明しました。

今回は、前回の最後で触れた始業に関して書き残したことである、「帳簿等の備付け・保存」に関して、解説します。

※ 以下、「建設業法」は、「法」、「建設業法施行規則」は、「規則」といいます。

 

1 帳簿等の備付け・保存について~会計帳簿ではありません~

① 建設業は帳簿作成・備付けが義務!

  建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その営業所ごとに、その営業に関する事項で国土交通省令で定めるものを記載した帳簿を備え、かつ、当該帳簿及びその営業に関する図書で国土交通省令で定めるものを保存しなければならない(法40条の3)とされています。ここで記載されている国土交通省令とは、全て建設業法施行規則を指します。

  つまり、法は、規則で定められた帳簿の作成・備付けを建設業者の義務として定めています。

  ここで、「ビジネスを行う以上、建設業者でなくても、資金の動きを記載する会計帳簿を作るのは当たり前では?」という疑問抱く方もいると思います。

  しかし、ここでの「帳簿」は、会計帳簿ではありません。

②建設業者に義務付けられた帳簿の内容

  建設業者が作成・備付ける必要のある帳簿は、以下の内容の記載が必要です。

 ア 営業所の代表者の氏名及びその者が当該営業所の代表者となった年月日

 イ 注文者と締結した建設工事の請負契約に関する次に掲げる事項

  ・請け負った建設工事の名称及び工事現場の所在地

  ・建設工事について注文者と請負契約を締結した年月日

・当該注文者(その法定代理人を含む。)の商号、名称又は氏名及び住所並びに当該注文者が建設業者であるときは、その者の許可番号

・建設工事の完成を確認するための検査が完了した年月日及び当該建設工事の目的物の引渡しをした年月日

 ウ 発注者(宅地建物取引業者を除く)と締結した住宅を新築する建設工事の

請負契約に関する次に掲げる事項

・当該住宅の床面積

・当該住宅が建設新築住宅であるときは、当該建設業者の建設瑕疵負担割合

の割合

※複数の業者が建てる際に、その建物の欠陥に対する責任割合のことです。

  ・当該住宅について、住宅瑕疵担保責任保険法人と住宅建設瑕疵担保責任保険契約を締結し、保険証券又はこれに代わるべき書面を発注者に交付しているときは、当該住宅瑕疵かし担保責任保険法人の名称

 エ 下請負人と締結した建設工事の下請契約に関する次に掲げる事項

  ・下請負人に請け負わせた建設工事の名称及び工事現場の所在地

  ・建設工事について下請負人と下請契約を締結した年月日、当該下請負人(その法定代理人を含む。)の商号又は名称及び住所並びに当該下請負人が建設業者であるときは、その者の許可番号

  ・建設工事の完成を確認するための検査を完了した年月日及び当該建設工事の目的物の引渡しを受けた年月日

  • 特定建設業者が下請契約をした場合は、以下の記載も必要です!

   ・支払った下請代金の額、支払った年月日及び支払手段

   ・下請代金の全部又は一部の支払につき手形を交付したときは、その手形の金額、手形を交付した年月日及び手形の満期

 ・下請代金の一部を支払つたときは、その後の下請代金の残額

 ・遅延利息を支払つたときは、その遅延利息の額及び遅延利息を支払った年月日

 ・・・つまり、資金の流れを記載する会計帳簿ではなく、請け負った工事の内容などが分かる帳簿を備付ける必要があります。

③ 帳簿に添付しなければならない資料

  上記の帳簿には、以下の資料を添付する必要があります。

 ・契約書及び変更契約書又は写し

 ・下請代金を支払った際の領収書等又は写し

  ※特定建設業者が下請契約をしたときのみ

 ・施工体制台帳(今後説明しますが、簡単に言えば工事に関わる全ての業者の名称・工事内容・工期等を記載したものです。)を作成する義務があるときは、施工体制台帳の主任技術者等に関する部分、全下請負人に関する部分

  ※工事現場閉鎖後のみ

  また、これらの書類に②の事項が記載されている場合は、該当箇所との関係

を明らかにすることで、帳簿への記載を省略できます。

④ 図書の保存

  上記の帳簿以外にも、発注者から直接建設工事を請け負った建設業者は、完

成図、工事内容に関する発注者との打合せ記録、施工体系図を保存する必要が

あります。

 

2 備付けるもの・保存するものはわかった・・・その方法は?

① 帳簿等の作成方法

  書面、記録媒体、コンピュータ上の保存のいずれでも問題ありません。ただし、必要な場合に閲覧できる必要があります。

② 変更があった場合は?

  遅滞なく、変更があった年月日を記載して、変更箇所を記載する必要があります。

③ 保存期間

  帳簿は、請け負った工事ごとに、5年間保存する必要があります。ただし、発注者と締結した住宅を新築する建設工事に係るものにあっては、10年間保存する必要があります。

  図書は、請け負った工事ごとに、10年間保存する必要があります。

④ 保存する場所

  本店に置けばいい・・・という訳ではありません。

  帳簿に関わる仕事を行う営業所ごとに備付け・保存する必要があります。

 

3 帳簿を置かなかったら・・・

  監督処分の対象になるだけでなく、10万円以下の過料に処されることになります。

 

4 今回の説明は、以上になります。

  今回で建設業の特徴・始業に関する事項の説明は終わりになります。

  次回からは、建設業を始業後、建設工事を受注する際の注意点を説明したと思います。

 

長野第一法律事務所では、建設業に関する契約やコンプライアンス、設立などについて、相談を受け付けています。

今回の説明はあくまでも概説ですので、これから建設業を始められる方・詳細の説明が必要な方は、専門知識豊富な所属弁護士が相談に対応しますので、是非長野第一法律事務所にご相談ください。(和手)

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