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クレーム対応と合意書の作成
企業に寄せられる苦情やクレームには、正当なものと不当なものがあります。
このうち、不当なクレームには応じる(=要求をのむ)必要はありませんし、応じるべきでもありません。
他方、正当なクレームについては、きちんと対応する必要があります。
例えば、飲食店や食品関係の会社で、商品が腐敗していたなど食品として適さない状態で出荷、販売した場合などは、その手段や態様が相当なクレームについては、返金に応じることは当然のことであるといえます(なお、たとえクレーム自体の内容が相当であっても、暴力を振るうとか、脅迫するなどの手段・方法が不相当な場合には別途考慮が必要になります)。
しかし、商品相当額を返金するだけでは済まない場合もあり、例えば、以下のようなものが問題になりえます。
(1)苦情を申し入れたり、商品を返品するために店舗等へ出向いた際の交通費や通信費
(2)治療が必要な場合の治療費、医療機関への交通費
(3)入通院が必要になった場合の、休業損害
(4)慰謝料
いずれも、当該商品の不具合と法的に相当な因果関係があるものは、損害賠償の対象となりえます。
逆に言えば、相当な因果関係の範囲を超える場合には、基本的には損害賠償の対象になりません。
このあたりの見極めはある程度常識でも可能と思われますが、中には判断が難しいものもありますし、項目としては妥当でも金額の算定の仕方がわからないというケースもあります。
企業としての判断で、一定の金銭を支払ってクレーム事案を処理するということはあり得ますが、お金の支払いをする際には注意が必要です。
というのは、同一の件についての蒸し返しのリスクや追加請求のリスクがあるためです。
例えば、「迷惑料」として合計5万円を支払って解決するということになった場合、企業としては5万円を支払って、これでこの件は解決したと思っていたら、後日、「慰謝料をまだ払ってもらっていないので追加で20万円払ってくれ」といわれてしまうことがあり得ます。
これは単に領収証をとっておくというだけでは対応できないリスクになります。
このようなリスクを防ぐには、お金を払う前に、合意文書を作成し、文書への署名捺印と引き換えにお金を支払うという方法をとることが有効です。
その文書では、①対象となる案件の特定、②金銭の金額、③その金銭の名目(解決金、損害賠償、迷惑料その他)④金額の構成、内訳(必要に応じ)⑤清算条項を意識する必要があります。⑤の清算条項は重要であり、これがきちんとした文言で盛り込まれていれば、仮にその後蒸し返しや不当な追加請求があっても、法的にシャットアウトすることができます。
他方、すべての事案で文書化することが望ましいのかどうかは、一考を要します。
お客の中には、文書作成を嫌がってかえって話がこじれたり、面倒くさがったりして話が頓挫してしまうこともあります。
きちんとした文書まで作成するかどうかについても、一律に考えるのではなく、ケースに応じて考える必要があります。
クレーム処理や不当なクレーム、カスタマーハラスメントにお悩みの事業者、企業の方は、長野第一法律事務所に御相談ください。