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フィリバスターと「スミス都へ行く」
「スミス都へ行く」(フランク・キャプラ監督)という映画をご存じでしょうか?
1939年の映画で、主演は若き日のジェームズ・スチュアートです。
カンザス州の田舎で、ボーイレンジャーの団長をしていた青年スミスが、ひょんなことから上院議員に指名され、合衆国の首都ワシントンに乗り込み、波乱を巻き起こすというストーリーです。
1939年の映画ながら、最初から最後まで、まったくだれることのないテンションを保っており、台詞のテンポや場面の切り取り方、ユーモアのちりばめ方など「これぞ映画のお手本」というような超名作で、「●●が選ぶ名画ランキング100」といった企画ではかならず上位にランクされる映画です。
ジェームズ・スチュアートの主演映画としても、最高傑作ではないでしょうか(「素晴らしき哉人生」も超名作ではありますが、「スミス都へ行く」のほうが上だとおもいます。)
わたしの個人的な映画トップテンにも入っています(実際に10個並べてみたことはありませんが、「スミス都へ行く」は間違いなくランクインするはずです)。
内容はぜひ、ご覧頂きたいのでストーリーの詳細な紹介は控えますが、この映画の見所の1つに、スミス議員が、自らの汚名を晴らし、不正を弾劾するために上院で行う演説のシーンがあります。
これは、フィリバスター(議事妨害)と呼ばれる合衆国議会の上院議員に認められる特権の1つで、
「いかなる上院議員も、他の議員の討論を、その議員の同意無しには中断させることができない」という条文に根拠があります。
このフィリバスターは、上院では、議員がそれを求める限りいくらでも演説や討論を許し、議員の英知を結集することを制度的に保障するためのもので、少数派の意見を尊重する民主主義の国アメリカの理想を体現する制度といえます。
議会戦術的には、このフィリバスターを発動し、問題法案を会期切れで廃案に追い込むという形で使われるようです。
徒手空拳のスミスもこの伝家の宝刀であるフィリバスターを抜き、一人で24時間にわたり演説を続け、謀略による自らの不正疑惑を弁明し、同僚議員の絡むダム開発の不正を追及し、スミスを疑いの目で見ていた人々の心を動かします。
フィリバスターはあまりに強力な制度であるため、実際にもしばしば使われ、濫用的な使用が目立つとしてその後、議員の一定数以上の賛成が得られたことを条件にフィリバスターによる討論を強制的に終結させる「クローチャー」という制度が導入されました。現在は、1975年の改正で、上院議席の5分の3以上(60議席以上)の賛成で、クローチャーが成立することになっているそうです。
最近では、このようなニュースもあります。
米上院のフィリバスター慣行、バイデン大統領が修正に意欲
フィリバスターやクローチャーについてのお話はこちらをご覧ください。
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米国上院における議事妨害「フィリバスター」日本生命ニューヨーク事務所 鈴木健午
ドラマ「ハウスオブカーズ」でも、このフィリバスターが登場していました。
日本では、このような制度は存在しません。
議事妨害の手段としては、おなじみの「牛歩戦術」というものがありますが、颯爽としてかっこいいフィリバスターと違って、おじさんたちがぞろぞろ歩いている姿は、なんだかあまりかっこよくはありませんね笑
強行採決ありきで法案を通過させるのではなく、議論を尽くすためのフィリバスターが、日本でも導入されたら、もっと政治が面白くなり、国民の政治への関心も集まると思いますが、岸田総理大臣、いかがでしょうか?