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会社に関する疑問③~株主名簿は大丈夫?~

 前回、取締役が会社において、強い権限を有する重要な立場と評しましたが、この取締役を選任・解任できるより強い立場の者が存在します・・・そう、会社の所有者に当たる「株主」です。

 日本の会社では、経営者と株主が一体となっていることや、物言わぬ株主も多いので、あまりパッとしませんが、海外では積極的に株主総会で発言するなど、決して無視できない存在となっています。

 今回は、そんな株主に関して、会社側がどのように把握していくか、株主名簿に絞って説明していきます。

 

1 会社は誰を株主として扱うか

  株式は、原則自由に売買可能なものであり、現時点での正確な所有者を特定することは困難です。

 しかし、会社は別に現時点での正確な所有者を積極的に把握する必要はありません。

 会社が株主として扱う必要があるのは、株主名簿に記載されている株主のみです。

 このため、株主の把握に関しては、株主名簿の作成と管理が重要になります。

※ 株主総会での権利行使は、公告又は定款で示した“基準日”に株主名簿に載っている株主に行使させる機会を与えれば問題ありません。

 

2 株主の把握方法

  株主の把握は、上述したとおり株主名簿で行います。以下では、株主名簿作成・管理に関して説明します。

(1)株主名簿は書面・データ?紙は何を選ぶべき?

   株主名簿は、以下の法定記載事項が記載されている限り、様式は自由です。

  そのため、ルーズリーフ等に記載することも可能ですし、デジタルデータで作成しておくことも可能です。

  ただし、株主等に開示を求められることもありますので、それなりにしっかりとした書面又はデータで作成した方が良いと思います。

(2)法定記載事項とは?

   株主名簿には、最低、以下の事項が記載されている必要があります。

  ア 株主の名簿または名称及び住所

    最も重要な事項です。株主の届出に従って正確に記載してください。

    勝手にカタカナやローマ字で表記してはいけません。

    なお、内容の真実性(住所が正しいかなど)を確認する必要はありません。

  イ 株式の数

    異なる種類の株式を発行している場合は、種類及び数ごとの数を記載する必要があります。

  ウ 株主が株式を取得した日

    「実際に取得した年月日」ではなく、「名義書換の請求を受理した日」 を記載することになります。

  エ 株券の番号・不発行

    株券の記号・番号を記載します。株券を発行していない場合は、その旨を記載します。

(3)法定記載事項以外は記載できないの?

   任意で記載することは可能です。届出印や配当金の受取り方法、配当支払時の税率、通知先なども記載すると管理・運用上便利です。

(4)株主名簿はいつ変更するの?

   株主から請求があった際に変更します。

(5)株主名簿はどう保管するの?

   会社の本店(株主名簿管理人がいる場合はその営業所)に備え置く必要があります。

   株主や債権者が営業時間内に見せるよう求めた場合は、いつでも閲覧できるよう備え置く必要があるのです。

(6)株主名簿は常に閲覧させないといけないの?

   株主や会社債権者は閲覧の理由を示した場合いつでも株主名簿を閲覧することができます。

  ただし、以下の場合は閲覧を拒むことが出来ます。

  ① 閲覧理由を示さない場合

  ② 株主又は債権者(以下併せて「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行った場合

  ③ 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行った場合

  ④ 請求者が株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行った場合

  ⑤ 請求者が、過去二年以内において、株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものである場合

  ※ 閲覧理由などを明らかにするために事前に申請書を作成していくことが望ましいです。

(7)名簿上の株主と連絡が取れなくなったら?

   5年以上連絡が取れない場合であり、かつ、いくつかの要件を満たした場合、競売、売却、買取り等が可能になります。

 3 中小企業では、株主名簿は、そもそも作っていないとか、一応作成しても、それ以降十分な更新だされていないことも多々見られます。

  株式会社の根幹である株主名簿の管理がおろそかなようでは、きちんとした経営はできませんし、そのことで会社がおもわぬ不利益を被ることもありえます。

 いざ開示を求められた場合のトラブルや総会の招集通知漏れなど大きな問題が生じる可能性もありますので、まずは、自社で管理している株主名簿を確認し、必要事項に漏れが無いかなど、ご確認ください。

 

 長野第一法律事務所では、株式の管理や株主名簿の作成・更新なども含めた企業の御相談にも対応しております。(和手)

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