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民事裁判のIT化

社会のあらゆる分野でIT化が進んでおりますが、裁判手続きについてもIT化の流れが進んでおります。

本稿では、民事裁判のIT化の概要についてご説明します。

 

1 民事裁判のIT化とは?

 平成29年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」において、「迅速かつ効率的な裁判の実現を図るため、諸外国の状況も踏まえ、裁判における手続保障や情報セキュリティ面を含む総合的な観点から、関係機関等の協力を得て利用者目線で裁判に係る手続等のIT化を推進する方策について速やかに検討」することとされました。これを受けて設置された「裁判手続き等のIT化検討会」で議論が重ねられ、「3つのe」の実現が掲げられました。

 3つのeとは、「e提出」「e事件管理」「e法廷」を指します。

 

2 3つのeとは

 e提出とは、これまで郵便やFAXで提出されていた書面や証拠をオンライン提出とすることや、手数料を電子納付することなどを指します。

 e事件管理とは、裁判所が管理する事件記録や事件情報に随時オンラインでアクセスできるようにすることなどを指します。

 e法廷とは、ウェブ会議システムを利用して裁判に出席できるようにすることなどを指します。

 

3 3つのeの現状

 e提出については試行的な取組みが始まっております。

 もっとも、現時点の肌感覚としては、e提出が活用されているという状況にはほとんどなく、従来どおりの方法で書面等を提出しています。

 e事件管理については、現時点では、従来とほとんど変わりがない、というのが私の感覚です。

 e法廷については、ウェブ会議により裁判に出席できるようになったことが大きな変化です。個人的には、現時点で最も大きく変わったのがこの点だと感じております。従来でも事務所にいながら電話により裁判に出席することが出来る制度もありましたが、電話ではコミュニケーションの内容に制約があるため、やりにくいところがありました。ウェブ会議ではコミュニケーションがとりやすくなったので、より充実した裁判を行うことが出来るようになったと感じています。

 

4 今後の展開

 今後、3つのeの実現が進むことで、書面提出が簡略化されるとともに、裁判所に赴くために要していた費用や時間なども軽減されると思われます。これにより、裁判に要するコストを圧縮されて裁判手続きが利用しやすくなることや、迅速な裁判の実現が期待できます。

 一方で、裁判というのは、紛争について国家権力が適切に判断をしてくれたというように当事者が納得しなければ、制度として成り立ちません。そして、「黒い法服を着用した裁判官が(ある意味)仰々しく裁判手続きを行っている」という事実そのものが、その納得感を醸成する1つの要因であったと感じています。

ともすれば「軽い」印象を受けるウェブ会議手続きを利用することで、これまでと同じような納得感を醸成できるのだろうか、という思いも個人的には抱えております。(坂井田)

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