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いわゆる信用毀損行為(不正競争防止法2条1項21号)に関する裁判例~アマゾン権利侵害申告事件

1 事案概要

  原告Xは、ECサイト大手のアマゾン・ジャパンにおいて、商品Aを販売していた。

  被告Yは、商品Aが自己の有する商標登録された商標を用いた商品Bを侵害するものと考えて、アマゾンに設置された権利侵害の申告フォームを用いて、3回にわたって申告をした。

  その結果、アマゾンは、商品Aの出品を一定期間削除した。

  Xは、商品Aは商品Bの登録商標を侵害するものではないとして、不正競争防止法2条1項21号に規定の信用毀損行為によって、X社に損害が生じた(販売機会の逸失による損害)として、Yに対し損害賠償請求訴訟を提起した。

 

2 裁判所の判断(令和6年3月18日大阪地判)

(1)結論

   X勝訴。Yに648万円余の損害賠償金を支払うよう命じた。

(2)理由

 ア アマゾンの権利侵害申告が不正競争防止法2条1項21号にいうところの「事実の告知」に該当するか

   肯定

 イ Yの故意過失の有無

   過失があったことを認定。

   権利侵害の事実について十分調査検討すべき注意義務を負っていたのにこれを尽くさなかった、との判断。

 ウ 損害額

   アマゾンによる出品停止措置期間日数に過去約1年の平均販売個数を乗じた額

 

3 解説

 

  アマゾンや楽天等のECサイトにおいて、自社の登録商標や意匠権を侵害する商品が販売されているのを見つけた場合、当該プラットフォーマー(アマゾンなど)の設置した申告フォームを利用して、「商標権の侵害です!削除してください」と申告したくなるところですが、この裁判例からもわかるように、不正競争防止法2条1項21号の信用毀損行為にあたらないかを十分注意することが必要です。

 不正競争防止法2条1項21号は以下のような規定です。

 二十一 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為

 特に本件のようにプラットフォーマーが設置した権利侵害申告フォームを用いた場合、問い合わせや主観的意見の伝達のようにみえる申告でも「事実を告知」したと判断される傾向があり、申告するにしても、信用毀損行為であるとの指摘を受けないような表現の工夫が必要です。

 また、そもそも商標権や意匠権その他の権利侵害に該当するかどうかは、裁判所同士でも判断がわかれることが珍しくないとおり、非常に難しい場合があります。「なんとなく似ている」「商標の一部が似ている」というだけでは、権利侵害は成立しないことがありますので、安易に権利侵害申告フォームを用いた申告をして、実際に出品停止などの措置がとられると、対象業者から逆に信用毀損行為で反撃をくらってしまうことがあります。

 またこの裁判例でも650万円弱の損害賠償請求が認容されているとおり、商品の単価や販売個数によっては巨額の損害賠償請求を受けてしまうこともありえますので、十分ご注意ください。事前に知的財産に詳しい弁護士や弁理士へのご相談をおすすめします。

 知的財産権に関するご相談は、長野第一法律事務所までどうぞ。

 

 

 

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