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建設業特集7 建設工事の受注①~受注契約の原則と注意点~
今回以降は、許可を受けた事業者がどのような点を注意していく必要があるか、解説します。
今回は、発注者から工事を受ける受注契約について、説明していきます。
※ 以下、「建設業法」は、「法」、「建設業法施行規則」は、「規則」といいます。
1 対等・公正・信義・誠実な契約を!
まず、法は、建設工事の請負契約に関する大原則として、「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。」(法18条)と定めています。
この規定自体は抽象的な規定ですが、両当事者の契約解釈・義務違反の有無などは、この大原則にしたがって判断されるので、決してこの原則に違反した契約を結ばないようにしましょう。
2 契約は書面で作成を!
(1)よくあること
民法上は、多くの契約が口頭のみで成立し、契約書等の作成は任意となっています。既に建設業を営んでいる業者の方でも、口頭や注文書だけ、見積書だけで契約とするケースも見られます。
しかし、このような方法は、後々契約トラブルとなる危険性が高いというだけでなく、そもそも建設業法違反となります。
違法なことをしないこと、血のにじむような努力で工事を完成させた後にトラブルを生じさせないためにも、契約書面は絶対に作成しましょう。
(2)法律上のルール
まず、建設工事の当事者は、法19条第1項柱書により、次項の内容を記載した書面を作成し、双方が書面又は記名押印の上、相互に交付しなければなりません。
一般的には、受注者(元請負となる建設業者)が契約書を作成し、受注者及び発注者(施工主)が署名(手書き)又は記名(記入済のもの)押印したものを両当事者で保管しあうことになります。
(3)契約書面に記載しないといけないこと
契約書面には、以下の内容を記載しなければなりません(法19条第1項1号~16号)
① 工事内容(何を作る・する工事か)
② 請負代金の額(工事の費用)
③ 工事着手の時期及び工事完成の時期(いつ始まり、いつ終わるか)
④ 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
(冬の間は工事をできない、夜はできないなどの定め)
⑤ 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
(前金や途中払いの必要がある場合は、その時期や方法)
☆請負契約の原則は、工事完成の時期に一括で報酬を貰うことになります。⑫参照
⑥ 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め(上で定めた契約と工事が変わる場合の措置)
⑦ 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め(途中で災害が発生して工事ができない・遅れる場合にどうするか)
⑧ 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更(物価が著しく変更した場合にどうするか)
⑨ 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め(通行人や隣人などの第三者に損害が生じたらどうするか)
⑩ 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
(注文者が施工に協力する場合はその内容)
⑪ 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期(検査及び最終引き渡し時期の記載)
⑫ 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
(⑤がなければ、代金に関しての記載はこれのみで足ります。)
⑬ 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容(約束と違う完成物だった場合にどうするか)
⑭ 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金(契約違反の場合にどうするか。)
⑮ 契約に関する紛争の解決方法(契約違反や会社をどのような機関で解決させるか)
また、建設リサイクル法の対象工事の場合は、以下の事項の記載も必要です。
A 分別解体等の方法
B 解体工事に要する費用
C 再資源化等をするための施設の名称及び所在地
D 再資源化等に要する費用
・・・建設リサイクル法ってなんでしょうか?
建設リサイクル法(正式名称:建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)とは、資源の有効利用のために法律で定められた資材を用いた解体工事または新築工事に関して、規制する法律です。
このため、床面積や請負額の基準がありますが、これらを満たすコンクリートや木材等を用いる解体業者等は、上記の記載を契約に入れる必要があります。
3 長くなりましたので、今回の説明は、以上になります。
契約書の作成は手間がかかり、一人親方や小規模事業者では作成しないないし、不十分なものしか作成されないことが散見されます。
しかし、正しく契約書を作成し、約束事の内容を明示しないと、折角完成させたあとに、「頼んだものと違う!」「遅れたから減額!」などと言われ、報酬をもらえない場合や、裁判に巻き込まれる可能性があります。
自分は大丈夫だと過信せず、転ばぬ先の杖として、しっかりとした契約書を作成しましょう。
長野第一法律事務所では、受注契約・下請契約などについて、相談を受け付けています。
また、委任いただければ、事案に即した契約書の作成も可能です。
契約書の作成の必要性はわかったけれども、どう作れば良いか不安な方、弁護士による法令を遵守した契約書作成をご希望な方は、専門知識豊富な所属弁護士が相談に対応しますので、是非長野第一法律事務所にご相談ください。