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親権、面会交流とフレンドリーペアレントルール②

夫婦が離婚する場合、未成年の子供については必ず親権者を決めなければなりません。このとき、父と母のいずれが親権を取るかで激しい紛争を生じることがよくあります。前回の記事はこちら

3.諸外国の状況

欧米の先進諸国では、離婚後も両親の共同親権制度を採用している国が多いです(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア、ニュージーランドなど)。
共同親権とは、離婚後も、子の教育、居所、医療などの重要事項については、両親に決定権を与えるというものです。
この場合、実際の日常生活においては、父母の一方が主たる監護者として子供と同居します。そして、子供は毎週末又は隔週末に非同居親の家に泊まり、さらに連休や夏休み、冬休みなどの長期休暇中にも非同居親の家に一定期間宿泊するなどと取り決める例が多いようです。
夫婦が離婚しても、親と子との関係は変わらず、父母の両方で子供を育てるという前提です。
これを前提に、別居時に無断で子供を連れて家を出ることを法律で禁止している国もあります。

4.ニュージーランドにおける親権と子の監護
(1)子の監護方法に関する取り決め

離婚後の子の監護方法について、ニュージーランドの例をご紹介します。
同国では、夫婦が2年間別居しているという実績がない限り、離婚は認められません。つまり、2年間の別居が離婚の要件となっています。
そして、原則として、この別居期間中に子供の養育監護に関する調整がなされます。

ニュージーランドでは、上記のとおり共同親権制度が採用されています。共同親権の下でも、子の「日々の養育」(day-to-day care)を夫婦間でどのように分担するが問題となります。そのため、日々の養育の分担方法、分担できない場合には非同居親と子との面会交流の具体的内容などを取り決める必要があります。

その方法として、まずは当事者間で協議をおこなうことが望ましいとされています。当事者間の円滑な解決を援助するため、家庭裁判所や民間団体による支援プログラム、カウンセリング等の支援体制が整えられています。当事者間で協議がまとまれば、それを詳細な「共同養育計画書」という形で書面化します。
当事者間で協議が整わない場合には、家庭裁判所に申し立て、カウンセリングや調停を受けることができます。それでも合意に至らなければ家庭裁判所が監護方法に関する判断(ペアレンティング・オーダー)を下します。
ペアレンティング・オーダーを出すにあたり、裁判所は、母親(父親)優先の原則を考慮することはできません。親の性別を判断の根拠にしてはならないことが法律上定められています。

裁判所は、両当事者の人間性や養育能力、子供との関係、子のニーズ、子の意見などを考慮し、養育の分担を決めます。最終的には、子供がそれぞれの親といかに有意義な時間を過ごせるかという観点が重視されるようです。
共同養育計画書やペアレンティング・オーダーでは、毎週末又は隔週末の金曜日の下校時から月曜の登校時までは他方の親が面倒をみる、長期休暇のいつからいつまでは他方の親に預ける、引き渡し場所、引き渡し方法など詳細な内容が記載されることが通常です。また、所定の場所・地域内に居住すること、他方の親の悪口を言わないこと等の条項が盛り込まれることも多いようです。

面会交流が認められないのは、父母の対立が深刻で明らかに子にストレスを与える場合、子の安全が確保されない場合等に限られます。面会を実施するについて親に問題がある場合、支援機関や親類の立ち合いを面会の条件に付けることもあるようです。
多くの場合、2年間の別居期間中に共同養育計画書又はペアレンティング・オーダーが成立し、共同監護と面会交流が軌道に乗っていることになります。

ニュージーランドでは、離婚をする際、必ず家庭裁判所の離婚決定を受けなければなりません。裁判所は、離婚決定を出すにあたり、子の日々の養育、面会交流、養育費等について当事者間で十分な取り決めがなされたかを確認します。

ニュージーランドの児童監護法は、子の福祉と最善の利益を促進するという観点から、子の監護及び養育に関しては、共同親権者その他の親族は継続的なかかわりを維持し、共同して養育することを定めています。子と相手親との面会を拒絶する親は、子供の福祉を害し親権者としての適格性を欠くとして、日々の養育者には指定されないでしょう。

その点で、フレンドリーペアレントルール(非監護親に対して寛容な親に監護権を与える)が当然の前提となっています。フレンドリーペアレントルールは、アメリカやフランスなど多くの国で採用されている監護者の判断基準です。

次回に続きます

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