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親権、面会交流とフレンドリーペアレントルール①

 夫婦が離婚する場合、未成年の子供については必ず親権者を決めなければなりません。このとき、父と母のいずれが親権を取るかで激しい紛争を生じることがよくあります。

1.継続性の原則の問題点

裁判所が親権者を決める際、「継続性の原則」(現状維持の原則)が重視される傾向にあります。
「継続性の原則」(現状維持の原則)とは、子供の現在の生活状況に特段の問題がなければ、現状の監護親を優先する考え方です。現在の安定した生活環境に変更を与えることは、子の情緒を不安定にし望ましくないという理由からです。その結果、夫婦の別居後、子供と同居している親の方が親権取得に有利になります。

しかし、継続性の原則を重視すると、親権を取るのに必死な親は、別居時に子を一緒に連れ出し、しかもその後子供を連れ戻されないように子供と相手親との接触を拒否するという行動をとることになります。
相手親としては、子供を確保しなければ親権取得が極めて困難になるため、子を奪取して連れ戻すことになります。以前は、このような子の奪い合いが頻発しました。
その後、さすがに子を奪取する行為は違法性が高いとして、奪取した親には親権を認めない裁判例がいくつか出されました。

しかし、そうすると、違法な奪取ではなく電話や子供の登下校時等に何らかの方法で子供に働きかけ子供自身に戻って来てもらうなど、穏当な方法で子を取り戻す方法を画策することになります。
これに対抗するため、子を連れ出した方の親は、子供と相手方とを一切接触させないように考えます。このような親の相談を受け、子供と相手方の面会には当面一切応じないという方針をとる弁護士もいます。

このような対立状況から、父と母がさらに憎しみ合い、紛争がエスカレートすることがよくあります。このような状況に至ると、今後の非親権者と子供との面会交流が非常に難しくなってきます。そのため、子供と会いたい親は親権にさらに拘り、紛争が長期化します。

このように、継続性の原則には、子供の連れ出し及び面会交流の不当謝絶を誘発するという深刻な問題があります。

もともと仲が悪くて別居・離婚するのですから、継続性の原則は、親の対立をさらに激化させる1つの元凶になっています。

継続性の原則については、上記のような問題点が長きにわたり指摘されていますが、未だに調停の席などで、裁判官や調停委員から「現状を変更すべき特段の事情がない限り、現在の監護親が有利」という趣旨の発言が出てきます。
そのため、実務の現場では、子供を確保するということが未だに重要視されます。

2.継続性の原則が重視される理由

このように問題の多い「継続性の原則」ですが、なぜ実務は改められないのでしょうか。

一番の理由は、判断が明確で分かり易いからでしょうか。

実務上、親権者を定める際には、親権者としての適格性、養育能力、養育環境、子の意思などが総合考慮されることになっています。しかし、このような判断要素は不明確なことが多く、両親ともに特段の問題がなく決定的な判断材料とならないことも多いです。実際、裁判所も判断に苦慮することが多いのではないでしょうか。

他方で、子供が現在どちらの親と暮らしているかは明確です。
そのため、「子供が現在は母(父)と同居しており安定的な生活を送っているため、親権者を他方に指定する特段の事情がない」等という理由をつけて、現状の監護親に親権を認めることが多いのではないでしょうか。

つまり、楽なのです。このような実務が続くと、一方(主に母親)が子供と穏当に同居しているという事実だけで思考が停止し、親権者を決めてしまうという方向に流れがちです。

しかし、一方の親と生活する状況が数ヶ月間続いたとしても、子供にとっては長い人生のうちの一瞬です。そのような短期間の実績だけで、帰趨を決めてよいのでしょうか。
また、子供にとって、自宅を出て数か月~1年間続いた別居状態と、従前慣れ親しんだ自宅・学校に戻ることのどちらが幸せでしょうか。
現状維持を重視する根拠はあるのでしょうか。

このように考えると、継続性の原則を重視すべき根拠は非常に弱いと思われます。

次回に続きます