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わが家のペキニーズ 2013年5月

 5年前の正月だった。書斎にいると,妻と2人の娘が外出から帰ってきた。
 「はい,お土産」と言ってケーキの箱のようなものを差し出した。私はケーキは食べないから,なんでこんなものが私の土産なんだろうと思った。みんながニヤニヤしているので,開けてみた。なんと中には,子犬が入っていた。

 私はもともと犬や猫が好きではなかった。犬を飼うなどと言う話は聞いていなかったから,不機嫌な顔をしていると,3人は「この犬,誕生日がお父さんと同じなんだよ」と言って機嫌を取ろうとしてきた。
 私はそれまで,犬というのは秋田犬や川上犬であると思っていたから,目が大きくて鼻ペチャのいかにも不細工な犬だなぁと思ったが,まあ自分も不格好だし,誕生日も同じだし,死ぬ時期もだいたい同じかなと思って反対はしなかった。チョコレート色だから,名前はその日のうちにチョコと決まった。

 ものの本を読むと犬はその家で誰が1番権威があるか理解し,下から2番目の位置に自分を置くらしい。ところが,こいつは私がこの家の主人であるにもかかわらず,妻と娘には玄関まで迎えに出るが,私が帰ってきても廊下の奥で「なんだ」というような態度で見ている。散歩は苦手で,道草ばっかり食っている。他の家の犬はハキハキテキパキと小走りに歩くのにと情けない。

 ペキニーズという犬の由来は江口さんの文章にあるとおりである。もともと中国の王宮で飼われていたが,阿片戦争でイギリスに攻め込まれ,その時皇帝の命令で全て殺された。しかし,たまたま数匹が生き残りこれがイギリスに連れられて行って現在に至っているらしい。そういうDNAを持っているせいか日本語より英語の方がわかるような気がする。
 私が晩酌するときは,「贅沢生ハム風」のドッグフードを目当てに何時も側に来る。まもなく2歳になる孫娘とは,まるで兄妹のように仲が良い。

(文責:武田)