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裁判・司法とシネマ 1 「エリン・ブロコビッチ」 2012年1月

裁判は,映画のテーマとしてよく取り上げられます。ドラマチックであることから映画のネタになりやすいのでしょう。
 今回は,「エリン・ブロコビッチ」(2000年 アメリカ)という映画をご紹介したいと思います。

 主人公のエリン・ブロコビッチ(ジュリア・ロバーツ)は,交通事故に巻き込まれ,さえない弁護士エドに訴訟の代理人を依頼します。調子に乗ったエリンの暴言で訴訟は無残に失敗,罵りあう二人はケンカ別れしますが,職がなく困った彼女は,エドの法律事務所で事務員として勤務することをエドに強引に認めさせます。

 事務員として働いていたエリンは,別件の資料調査で訪れた役所で,偶然不審な書類を見つけます。その書類は,ある地域で,大企業が住民の健康に重大な影響を与える水質汚染を行なっていることを示すものでした。エリンは,仕事や育児をそっちのけにして調査を始め(エドの事務所をいったんはクビになりますが,それでもエリンは調査を止めませんでした),実際に住民の健康が脅かされていることを突き止めます。
 大企業相手の公害裁判になんか勝てっこないと渋るエドを説得し,エリンは怖がる住民を説得し,証拠を必死に集めます。最初は渋っていたエドも被害の深刻さを目の前にして,真剣に事件に取り組み始め(実はエドはやる気になれば有能な弁護士だったのでした。),元従業員の決定的な証言も得て,ついに大企業から3億3300万ドル(1ドル100円で換算すると330億円)という史上最高の賠償金を和解で勝ち取るというストーリーです。

  驚くのは,これはフィクションではなく,実話だということです。エリン・ブロコビッチは実在する人物です。巨大企業を相手に,堂々とあきらめることなく立ち向かうエリンの姿を描いたこの映画は,観るたびに勇気を与えてくれます。軽やかにコミカルに描かれているため,肩肘張らずに楽しめる映画です。

 私は弁護士なのでどうしてもエドに肩入れして映画を見てしまうのですが,エドのセリフには弁護士のリアルな感覚がよく表現されていると思いますし,エドの適度に俗物っぽい(そして,根は熱血漢)ところもリアルで親しみが持てます。
 ラストシーンのエドとエリンのやり取りも大好きで,結末がわかっていてもついニヤニヤしてしまいます。
 お勧めの一本です。

(文責:一由)